自分でも見事な三角関係が出来たもんだと感心している。
 屋上でいつも一緒に昼飯を取るキッド、なまえ、俺の三人。目の前で菓子パンの奪い合いをする子供っぽい二人を見ながら、俺は冷静に自分達の関係について考えていた。俺達三人はきっと誰から見ても「仲良し三人組」と言ったとこだろう、この間麦わらにも「お前等仲良いなあ!」と言われた覚えがある。俺達の仲が良いことは俺も認める。実際中学の頃からずっと一緒にいる訳だから仲が良くならない理由が見当たらない。
 しかし他人が思ってるよりも俺達の関係は複雑である。キッドはそうでも無いとは思うが、少なくとも俺には、だ。まずキッドは学校でも有名な女たらしだ。それだけであればまだマシだったろうが、なまえはそんなキッドが好きだ。そしてそんななまえに想いを寄せているのは言わずもがな俺だ。

「そろそろ女引っ掛けるのやめた方が良いよ、キッド」
「うっせェ、お前には迷惑かけてねェだろうが」
「…キッドが引っ掛けた女の子達からの視線が痛いんだよ」

 キッドは自分のしている事について他人から注意されるのを酷く嫌う。それを分かっているのに注意するのはなまえの良心からなのか、嫉妬からなのかは知らないが、どちらにしろキッドの事を考えて言っているのは分かる。
 大体まず最初に俺がなまえの事を好きになったかなんてのは、当人の俺でさえもよく分からないのだが、頬を紅潮させながらキッドを見る横顔を綺麗だと思ったのは未だによく覚えている。別になまえで無くても良かったのに、とつくづく自分は報われない人間だと思う。

「なら俺と一緒にいなけりゃ良いだろ」

 冷静に自分達の関係について考察している場合じゃなかった、と今更ながら後悔した。下唇を噛みながら涙を堪えているなまえといつも以上に眉間に皺を寄せたキッドの姿が視界に入った。
 キッドには一度も言った事は無いが、キッドは馬鹿だと俺は思う。学問等での馬鹿ではなく、人間として馬鹿、というより人間の感情に疎いのだ。目の前にいる今にも泣きそうな女子を見て何も思わないのか。鈍感だからなまえの気持ちに気が付かないのは仕方無いとは思っていたが、先ほど放った言葉は勢いとは言え、あまりだと思った。
 なまえが怒りでか涙を堪えているせいか真っ赤になった顔で屋上から走り去っていった。前々から恐れていた自分達の関係の崩壊が今正に起こっているのだ、と怒りのような自分でもよく分からない感情を抑えながら、取敢えず俺は無意識の内に流れていた涙には意識もくれず、ただひたすら仮面越しに見える自分の親友を睨み、憎んだ。



湖にナイフを刺す






20110921
title by CELESTE

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