「お前は本当胸無ェなあ!」

 部員が使ったくそ重たい用具をこのかよわい少女が運んでる最中、エース先輩は良い笑顔でそう言ってきた。別に私も嫌々この部のマネージャーをやってる訳じゃないし(学校一の男前って噂されてるマルコ先輩もいて寧ろ目の保養になってるし)、自分が貧乳である事は重々承知だが、わざわざ人が一生懸命働いてる時に言わなくても良いと思う。
 さり気ないセクハラ発言をしたエース先輩に「巨乳が好きならプリンでも食っとけ」と念を込めながら横目で一睨みし、用具を戻しに倉庫へ向かう。今日も部員の為に良い汗かいちまったぜ!と一人自己満足しながら部室に戻れば、部室のドアの前で着替え終わったエース先輩が座っていた。

「いくらそこで待ってても巨乳美女は現れませんよー」
「馬鹿、俺は美乳派だ」
「うわー…それよりも本当に美女を待ってるんですか?返答次第でこれからの私のエース先輩への態度がだいぶ変わりますけど」
「違ェよ、俺はルフィを待ってんだ」

 兄弟愛を感じながら部室に入り、着替える。でも今日ルフィは確かサンジと先に家に帰って行った覚えがあるけどなあと考えながら、部室を出ればエース先輩はまだ地面に座っていた。もしかしてエース先輩はルフィが部活サボって帰宅した事を知らないんじゃないのか。そう思ってエース先輩にルフィは今日先に帰ったことを伝えたが、先輩は無言でそのまま地面に座り続けたままだった。
 まあ、ああ見えてもちゃんと考えてるエース先輩の事だから何か理由があってあそこに座っているのだろう、そう思って座ったままのエース先輩に挨拶をして部室を去ろうとすれば「おい」と呼び止められた。言わずもがな呼び止めたのはエース先輩なのだが、もし次私の胸について言ってきたらアソコ思い切り蹴ってやろうと決心して振り向けば、エース先輩は立ち上がってこちらを見ていた。

「ん、どうしたんですかエース先輩」
「いや、俺も今偶然ルフィが今日一緒に帰れねえって言ってた事思い出してよ」
「先輩が思い出したっていうか私が教えてあげたんですけどね」
「仕方無えから送ってってやるよ」

 さっきまで「俺はルフィを待っているんだ」と格好つけながら地面に座ってたのに急に何を言い出すのだこの人は。いつも私の小ささや鈍臭さを笑う意地悪な先輩が珍しく優しいので変に思い、思わず断る。すると先輩は大股でこちらに近づいて来、私は驚いた。
 私が何かと問いかける前に先輩はただ一言「行くぞ」とだけ言い、私の手を握って歩き出した。まさか手を握られるとは思わなくてつい照れてしまい、恥ずかしくなったが前を見れば耳まで赤くしたエース先輩がいて、思わず素直じゃないエース先輩に笑ってしまった。



頬を染めて沈む






20110902
title by CELESTE

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -