自分勝手な女は嫌いだ嫌いだ言ってた俺がまさかこんな典型的な自分勝手な先輩を好きになるとは思わなかった。俺を見かければどこでも「ローくん!」なんて小さい子供みたいに手を大きく振ってくる癖に、俺が必要としてる時には勝手にフラフラとどっかに消える。俺が先輩に告白した時もそうだ、せっかく俺が告白してやったというのに先輩はいつもみたいにヘラッと笑って返事もせずに家に帰り、それからの数日間は音信不通で学校にも来なかった。
 今も全く同じ状況で、俺がせっかく先輩にメールで遊園地に行こうとデートの誘いをしたら、先輩は俺がそのメールを送信した日から学校に来なくなった。と思ったら急に街中でフラッと俺の前に現れて、無理矢理お洒落なカフェに連れて行かれた。何だかムカついて向かいの席に座る先輩を見てやれば、先輩はいつもの笑顔で「久しぶりだねえ、ローくん!メール返信出来なくてごめんね!」なんて呑気に話しかけてきた。

「メール、まだ返事した方がいいかな?」
「もう何でも良いです」
「あ、でもあれだ、私今週は忙しくてデート出来ないやあ」
「誰もデートしてくれなんて言ってませんし」

 自分でも素直じゃねえなと思いながらヘラヘラ笑う先輩に返事をする。すると先輩は何を思ったのか更にヘラヘラし出して、今度は映画の話を持ちかけてきた。おい、俺のデートの誘いはどうなったんだよ。自分でもう良いと言ったとは言え、流石にスルーされるのには少し苛つく。先輩はそんな俺はお構いなしに勝手に話を進めていた。

「そうそう、私今流行りの映画!あれ観たいんだよね!」
「ああ、先輩がいかにも好きそうなラブストーリーですよね」
「うん、でも一人で観るの寂しいし」
「は?」
「来週の土曜にでも観に行きたいと思ってるんだけど、一緒に行ってくれる人いないかなあ」
「…」
「キッドくんとか暇かなあ」
「……、すよ」
「ん?」
「俺も偶然にも来週の土曜は暇なんで行ってあげますよ」

 さも俺がしょうがねえから行ってやるよ、みたいな雰囲気を醸し出してそう言えば、先輩は嬉しそうに笑った。そうして一言「そっかあ、相変わらずローは優しいね!」と言ってきた。

「一人寂しく映画を観に行く先輩を想像してみたら可哀想になっただけです」
「土曜日、楽しみだねえ」
「…そうですね」
「ローくんとの初めてのデートだねえ」
「…そうで、え?」
「遅くなったけど、私もローくんの事好きだよ」

 いつもとは違う柔らかい笑顔でそう言ってきた先輩は悔しい事にかなり綺麗で思わず目をそらしてしまった。と同時に嬉しい感情よりも先に「ああ、やられた」とだけ思った。この人はずるい、自分勝手な癖して俺の気持ちを振り回して最終的にはこんな不意打ちをかけてくる。目の前で幸せそうに笑う先輩にまた「…そうですね」とポツリと言えば先輩は更に嬉しそうに笑った。取敢えず既にデートのプランを立てなきゃと張り切る俺をどうしてくれようか。



パステルカラーの惑星が笑う






20110815
title by √A

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