「へぇ、フィンクスってやっぱりこういうのが好みだったんだ。ごめんね、私なんかが彼女で」
「いやちょっと待て。俺の好みとかそんなんじゃねェ」
「へぇ、そっかそっか。じゃあこっちの方は何なんだろうね。こっちも巨乳ばっかなのにね」
「いやあの、だからその…」

 どーん、とソファにふんぞり返ってフィンクスの私物らしきエロ本を眺める。どいつもこいつもデカイ乳ぶら下げやがってこの野郎。悪かったな貧乳で。必死にいい訳を探してるフィンクスを横目で見て、私は持っていたライターでエロ本に火をつける。こんなものこんなものこんなもの。

「あああああ、!」
「何」
「いや、何じゃねェよ。それシャルのなんだって…!」
「バカですかアンタは。シャルがこんなの見る訳ないでしょ」
「お前がバカか!」

 男はみんなエロ本見てると思うけど、シャルは見ないに決まってる。いや、見て無いってことを望む。見てたとしても、あいつはきっとパソコンに入れてる方だからフィンクスみたいな醜態は晒さないだろう。

「あークソ。お前マジでないわ」
「ああ?彼女の前で堂々とこんなもん出してるアンタが悪いんでしょ」
「うっせぇ、」
「こっちのセリフだこの野郎」
「あーもう、うぜぇ。黙れ」
「……うぜぇのはお互い様だろうが。いっぺん死ね!」

 怒りが最高潮に達してしまった。これはフィンクスが悪い。決して私のせいではないと言いたい。立ち上がってめいいっぱいフィンクスを睨むと、ほとんど灰になったエロ本を水道にブチ込んで外へ出た。何も持ってこなかったから頭が冷えたら戻るだろうけど、それまでにフィンがどっかに消えてたらまた怒りそうだなあ、と思いながらとにかく人の多い所を目指す。街へ行けば、予想通りに人、人、人。ちらほらカップルを見つけて、そのイチャイチャぶりに腹を立てると、今度は人気のない所へ向かった。

「…ハァ、やっと見つけた」
「………」

 海岸で沈んでく夕陽を見ていると、後ろから息切れが聞こえた。どこの変態だ、とふり返ると何とよく知ってる奴だったのでビックリ。

「何しに来たの、フィンクス」
「何ってお前…」

 呆れた様な顔をして私の隣に腰を下ろしたフィンクスは、ポリポリと頬を掻きながら目を泳がせた。ああ、見てるだけでイライラする。

「言いたい事があんならハッキリ言いやがれこのヘタレ!」
「なっ…!お前、ヘタレはねェだろ!ヘタレは!」
「うっさい。アンタ見てると何かイライラする!」
「はぁぁあああ!?お前見てる方がイライラするわ!」
「んじゃ見んなハゲ!」
「うるっせー、ハゲじゃねェし。お前ちょっとこっち向け!」
「何であんたの顔見なきゃならな……」

 いきなりフィンクスの手が私の頬を包んで、目があったと思ったら一瞬で息が止まった。何が起きてんのか、すぐに理解して、スーッと今までのイライラが消えて行った。これぞマジック。フィンが私にだけ掛けれる魔法。

「悪いな、俺なんかが彼氏で」

 若干目をそらしながら夕陽でか、自発的にか、顔を真っ赤にさせたフィンクスはぶっきら棒にそう言った。ブハッ!と吹き出せば、あークソっ。と言って顔を隠してしまった。(可愛いなあ)そんなフィンクスの手を握って立ち上がった。

「いいよ、許す」



悪いな






20110615
from みっちゃん






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