俺の姿を見ただけでさっと横に避ける奴らが作った歩道のど真ん中の道をデカい欠伸をかましながら歩く。キャーキャーと耳につんざくうるせェ女共の声は完全に無視。かと思えば後輩の不良(ガキ)共に野太い挨拶をされ適当に返す。朝からタリィな。

「キッド先輩はざーす!!!」
「おう」
「ビューティフルワンダフルキッド先輩はざーす!!!」
「お…何でテメェが便乗してんだ」
「痛い痛い!先輩痛いです!でももっとお願いします!」
「朝からめんどくせェよまじで」

 ガキ共に交じって頭を下げていたバカ女の頭頂部を肘でぐりぐりしてやる。一応女だから手加減はしてやってるが痛いことには変わりないと思う、のに、もっととか言っちまうこいつはただのバカ。故にバカ女。

「キッド先輩どこ行くんですかー!」
「教室に決まってんだろバカ」
「あたしも行きます!」
「いや、くんな、まじで」
「またまた〜ほんとは嬉しいくせに照れちゃって〜」
「いや、くんな、まじで」
「ガチか!」

 バカ女は適当にあしらって歩を進めるが、バカ女はただのバカ女ではなく"しつこい"バカ女らしく、上履きに履き変える間に少し離れた以外は常に俺の隣をキープし続けている。このままほんとに教室までついてきて予鈴が鳴るまで一方的に喋り続けるつもりなのか。想像しただけでうんざりする。

「…お前どこまでついてくるつもりなんだよ」
「キッド先輩との幸せまで。ちなみに片道切符で」
「頭が弱い奴の乗車はお断りさせて頂いております」
「よっしゃ!あたし頭良いから大丈夫じゃん!」
「お前以外の全人類に謝れ」
「あたし全人類で最下位の頭!?」

 言うのも恥ずかしいがこのバカ女に俺は昨日告られた。一目惚れしたとか何とか言ってたが面識も無かったし特定の女を作る気がねェから断った、確かに断った。普通の女なら話しかけることは疎か廊下ですれ違うのでさえ気まずいオーラを醸し出してくるようなものの、こいつは何事も無かったかのように堂々とアピってきやがる。アピールの仕方がまたバカっぽいのが残念極まりないが。

「…」
「な、何ですかそんなに見て……は!もしかして惚れ」
「頼む黙れ」
「はひ」
「…黙ってたらそれなりなんだがな」
「え」

 黙れとは言ったがアホ面をしろとは言ってねェ。そのままじっと見てきやがるから視覚的にも気持ち的にも耐え切れず小突いてみた。だが微動だにしない。…頭さえ良けりゃまともに相手してやってもいいのに、残念な女。

「その顔やめろよ」
「……」
「…あのな、黙ってたからって惚れるわけじゃねェぞ」
「あれ?バレバレ?」
「顔に全部書いてあんだよ」
「え!じゃあ"キッド先輩好き"ってのも書いてありました!?」

 書いてあるどころか昨日聞いたわ、とは何故か言えなかった。両手で顔を隠して指の間から俺を見る様が気持ち悪過ぎたからだ。んな行動さえしなければちょっと可愛いとか思っ

「ちなみに"キッド先輩抱いて"ってのもバレてますか!?」

 てない、全く思ってない。

「…お前まじ絡みづれー…」
「まじですか!じゃあもっと絡みやすくなるように頑張りますね!」
「それ頑張ってどうにかなるもんなのか」
「なります!愛の力で!」
「へー」
「温度差すごいな」
「ったりめェだろ」

 むしろ同じ温度だと思える方が凄ェよ。どんだけポジティブだ。何だかんだ話してるうちに教室に着いちまったから、しょぼくれた顔のバカ女にひらりと手を返して中に入ろうとした。簡単に無視できる掴まれた学ランの裾を振り払わなかったのはただの気まぐれ、のはず。

「また会いに来ていいですか?」
「……好きにしろ」
「ふふ」
「何だよ」
「キッド先輩って何だかんだ相手してくれますよね。そういうとこが大好きです!」

 こいつはまじもんのバカらしい。今、朝。ここ、教室の前。ギャラリー、多数。こんな状況でよくもまあ恥ずかしげもなくんな台詞吐けるもんだ。呆れを通り越して笑えてきた。しつこいバカは嫌いだが素直なバカはそんなに嫌いじゃねェ。ほやほや笑うバカ女はどっちのバカでもあるが、まあギリギリ合格ってとこだな。

「分かりづらい優しさにトキメキめもっちゃいます…!」
「お前がバカ過ぎるから相手してやらねェと可哀相だろうが」
「同情!?同情するなら愛をくれ!」
「俺の愛は高ェぞ」
「いくらですか」
「そのそろばんどっから出した」

 真剣に見積もり始めたバカ女をこれからどうしてやるかはまた考えるとして、バカ女よりも頭の中が花畑な後ろで笑いを堪えてるトラファルガーをとりあえずはボコることに決定した。このバカは完全に不合格。
どいつもこいつも残念ばっかでバカばっか!同情するならキラーをくれ!



バカな子ほど何とやら

(バカ女はお気に入り登録完了)






20101110
from ハルたん






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