わたしはサッチが好きだ。眉毛を下げて笑う笑顔や、大きな背中、ピシッと決まったリーゼントも、煙草と香水の混じった匂いも、サッチの全てが大好きなのだ。そんなサッチと実は両想いだとわかったとき、わたしは嬉しくて嬉しくて、ついはしゃぎすぎて海に落ちてしまったのだ。その時、すぐに助けに来てくれたのはやっぱりサッチで、わたしを抱き上げ、眉毛を下げて優しく笑ってくれた。

 そんなある日のこと。
 サッチはぱっつん前髪が好き、どこからかそんな情報を仕入れては、すぐにはさみと鏡を用意した。そしてずっと伸ばしていた前髪を何の躊躇いもなくばっさりと切ってしまった。

「ぎゃあああああぁー!」

 鏡を見て驚いた。どうやら少し…いや、随分と短く切ってしまった。これではかわいいぱっつんと言うよりか、ただのオンザ眉毛だ。鏡に映るあまりに惨めな自分の姿に何だか泣けてきた。

「なまえ、どうした?」

 サッチはわたしの悲鳴を聞いて、飛んできてくれたのだろう。少し息が上がっている。わたしは切りすぎた前髪を押さえて、サッチを見た。サッチは何事かと、眉間に皺を寄せている。

「サッチはぱっつん前髪が好きって聞いたから、前髪切ったら切りすぎちゃったの!」

 サッチは眉間の皺を緩めて、代わりに眉毛を下げて優しく笑った。そしてそのまま大きなサッチの体にぎゅっと抱き締められた。大好きな香りに包まれ、わたしの心臓はばくばくと騒ぎ出す。サッチはわたしの随分と短い前髪にそっと触れるように頭を撫でてくれた。

「バカだなぁ、お前は。どんななまえでもかわいくって仕方ねぇってのに。」

 そう言って笑って、優しくて甘いキスをわたしにくれた。こうしてまた一段とサッチのことが大好きになるのだ。切りすぎた前髪も、何だか悪くないような気がしてきた。



大人なサッチと子供のわたし






20101115
from かなえちゃん






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