「本当ツイてない」
「それはこっちの台詞だ馬鹿」

 滅多にしない席替えを今日した。大体は担任の気分でするから、二ヶ月に一度であったり、酷い時は半年近くしない事もある。だから、普段しないから、こんなツイてない事が起こるんだ。ただ今私はクラスで一番良い席と言われる窓際の後ろから二番目の席に座っている。
 ここまでは最高だった。私のテンションもかなり高かった。筈なのに、"隣お前かよ"と聞き慣れた声が聞こえた瞬間、これからの学生生活終わったなと思った。声の聞こえた方、つまりは右横を見れば、相変わらず痛々しい髪色をした奴が突っ立っていた。

 恐らく皺が寄っているだろう私の眉間にキッドはドキツいデコピンを一発かましてきた。痛いとみぞうちをくらわそうと腕を伸ばせば、簡単にひょいと手首を掴まれた。それだけで怒りが込み上げてくるのに更には遅っせェよと鼻で笑ってくるもんだから、もう片方の殴ろうとしたらまた掴まれた。両腕を掴まれた私はどうする事も出来ず、でも観念したら負けを認めたみたいで悔しいからわーわーと騒いだ。そしたら私の前の席になったであろうトラファルガーが口を開いた。

「うるせェよ」
「本当だ、うるせェよお前」
「死ねキッド」
「お前が死ね」

 いーっと歯を見せてキッドを威嚇すればぐっと顔を近づけられた。何をされるのか分からないからか、体のどこからか熱くなる。予想以上に近い顔に戸惑い、広げていた口を閉めれば、頭突きをくらった。まじふざけんなよ。

「いやいや、ふざけんな?」
「お前が威嚇してくっからだろ」

 ムカついたから足でキッドの脛を蹴ってやれば効かなかったらしい、蹴ったと同時にまた私は頭突きをされた。もうまじで頭痛い。最初の頃よりもっと眉間に皺を寄せてキッドを見ればニヤリと笑われた。おっしゃ、そろそろ股間蹴ったろかな。そう思った時、ずっと私達のやり取りを見ていたトラファルガーがまた口を開いた。

「でもお前等何だかんだで仲良いよな」

 トラファルガーが言った言葉に私もキッドも目が点になる。しばらく二人で呆けていると、キッドが"んな訳ねェだろ!"と叫んだ。私も負けじと"有り得ない!"と反撃するが、どうやらトラファルガーには逆効果らしく、トラファルガーはさっきまで喉を鳴らして笑っていたのを、今度は声を上げて笑った。ひとしきりに笑った後、トラファルガーはキッドと私を交互に見て、いつものようにニヤリと笑い、私達を指差した。

「でもお前等、二人共顔赤いぞ?」



20100212/皮肉屋ラブロマンス
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