びっくりした。何でびっくりしたかって、隣のクラスの可愛いと学年中の男子から評判の女の子が仁王くんをぶっていたからだ。
同じクラスの仁王雅治くん。立海テニス部のレギュラーでまず立海の生徒で彼を知らない人はいないと思う。テニスも上手くて顔立ちも良い、しかし人を騙すのが上手くペテン師と呼ばれているらしい。そしてそのペテンの才能(才能と言って良いのかは分からないけど)を利用しているのか、彼は様々な女の子達を取っかえ引っ換えしている、そんな噂をよく耳にする。そんな噂が流れているにも関わらず、彼に想いを寄せる女の子がたくさんいるんだから、やっぱり彼はどこかしら魅力的なんだと思う。
クラスメイトだからと言って、必ずしも話した事がある、ましてや仲良くなるなんてことは無い。私だって仁王くんと話したことも無いし、仁王くんについて知っている事と言えば何個かあるが、それだって全て友達から聞いたものだから彼が本当はどういう人なのかなんて私が知っている訳がない。だからこそ仁王くんがぶたれた時は心底驚いた。
たまたま、本当にたまたま宿題であるプリントを机の中に忘れたからと放課後教室に行っただけなのに、こんな修羅場に立ち合わせてしまうとは自分の不幸さに乾杯。それよりも、ぶたれた後にニヤリと効果音がつきそうな位いやらしく微笑んだ仁王くんにはもっと驚いた。
「痛いのう、」
左手をぶたれた左頬に沿え、仁王くんはそう言った。本当に痛いのかもしれない、しかし彼は笑っている為、全く痛そうには見えない。寧ろ、半泣き状態の殴った張本人のあの可愛子ちゃんを挑発しているようだった。「お前さん、顔は良いのに性格は最悪じゃのう」、笑いながらそう言う仁王くんを思わず二度見てしまった。今、何と言ったか。仁王くんが学年中から評判の女の子に"性格は最悪"だって?何たるチャレンジャーなんだ、そう驚愕した反面感心していれば、私が突っ立っているドアの反対側のドアから女の子が泣きながら走り出て行った。
ドアの前でただただ気まずく突っ立ってるのもどうかと思ったので、私は遠慮がちに教室のドアを開け、白々しく"あ、仁王くんこんばんは"と普段挨拶もしない仲なのに声をかけた。『私は何も知らない、何も知らないから巻き込まないでください』、そう仁王くんに念を送りながら(届く筈もないが)自分の机まで小走りし、机の中にあったプリントを取り出して足早に教室から立ち去ろうとすれば、声をかけられた。言わずもがな、あの仁王くんにだ。
「のう、」
「…何でしょう」
「お前さん、どこから見とった?」
やっぱりぶたれた事を気にしているのだろうか。素直に仁王くんがぶたれる所から、と言えば仁王くんは笑った。何故笑っているのかと首を傾げていれば仁王くんは私にぐんぐん近づいてきた。一歩一歩と近づいてくる仁王くんに対し、私も一歩一歩と下がるが最終的に仁王くんとの距離はあと少しだけとなっていた。何されるか分からないこんな状況、自分でも早く教室から逃げ出れば良いのにと思うが、あまりにも急に近づいてきたため出来なかった。
「俺、さっきみたいな女は好かんのじゃ」
「で、でもあの子は可愛いくて良い子だよ、」
「俺にとったらお前さんのが何倍も可愛え」
「何を言って、」
私が言い終える前に仁王くんは私の唇に自分のそれを重ねた。ああ、ファーストキスが今まで一度も話した事の無かった人に奪われてしまった、そう考えながらもゆっくりと仁王くんの顔を見る為、自分の顔を上げれば仁王くんはさっきみたいにはニヤニヤしておらず、真剣な顔をしていて、不覚にも格好いいと思ってしまった。そしてあの整った顔と綺麗な声で「ずっと前から好いとうよ、」なんて耳元で囁いてくるもんだから、私は取敢えず頷くしかなかった。
詐欺師の嘘の真相
何年か前に運営してたtnsサイトから
同じクラスの仁王雅治くん。立海テニス部のレギュラーでまず立海の生徒で彼を知らない人はいないと思う。テニスも上手くて顔立ちも良い、しかし人を騙すのが上手くペテン師と呼ばれているらしい。そしてそのペテンの才能(才能と言って良いのかは分からないけど)を利用しているのか、彼は様々な女の子達を取っかえ引っ換えしている、そんな噂をよく耳にする。そんな噂が流れているにも関わらず、彼に想いを寄せる女の子がたくさんいるんだから、やっぱり彼はどこかしら魅力的なんだと思う。
クラスメイトだからと言って、必ずしも話した事がある、ましてや仲良くなるなんてことは無い。私だって仁王くんと話したことも無いし、仁王くんについて知っている事と言えば何個かあるが、それだって全て友達から聞いたものだから彼が本当はどういう人なのかなんて私が知っている訳がない。だからこそ仁王くんがぶたれた時は心底驚いた。
たまたま、本当にたまたま宿題であるプリントを机の中に忘れたからと放課後教室に行っただけなのに、こんな修羅場に立ち合わせてしまうとは自分の不幸さに乾杯。それよりも、ぶたれた後にニヤリと効果音がつきそうな位いやらしく微笑んだ仁王くんにはもっと驚いた。
「痛いのう、」
左手をぶたれた左頬に沿え、仁王くんはそう言った。本当に痛いのかもしれない、しかし彼は笑っている為、全く痛そうには見えない。寧ろ、半泣き状態の殴った張本人のあの可愛子ちゃんを挑発しているようだった。「お前さん、顔は良いのに性格は最悪じゃのう」、笑いながらそう言う仁王くんを思わず二度見てしまった。今、何と言ったか。仁王くんが学年中から評判の女の子に"性格は最悪"だって?何たるチャレンジャーなんだ、そう驚愕した反面感心していれば、私が突っ立っているドアの反対側のドアから女の子が泣きながら走り出て行った。
ドアの前でただただ気まずく突っ立ってるのもどうかと思ったので、私は遠慮がちに教室のドアを開け、白々しく"あ、仁王くんこんばんは"と普段挨拶もしない仲なのに声をかけた。『私は何も知らない、何も知らないから巻き込まないでください』、そう仁王くんに念を送りながら(届く筈もないが)自分の机まで小走りし、机の中にあったプリントを取り出して足早に教室から立ち去ろうとすれば、声をかけられた。言わずもがな、あの仁王くんにだ。
「のう、」
「…何でしょう」
「お前さん、どこから見とった?」
やっぱりぶたれた事を気にしているのだろうか。素直に仁王くんがぶたれる所から、と言えば仁王くんは笑った。何故笑っているのかと首を傾げていれば仁王くんは私にぐんぐん近づいてきた。一歩一歩と近づいてくる仁王くんに対し、私も一歩一歩と下がるが最終的に仁王くんとの距離はあと少しだけとなっていた。何されるか分からないこんな状況、自分でも早く教室から逃げ出れば良いのにと思うが、あまりにも急に近づいてきたため出来なかった。
「俺、さっきみたいな女は好かんのじゃ」
「で、でもあの子は可愛いくて良い子だよ、」
「俺にとったらお前さんのが何倍も可愛え」
「何を言って、」
私が言い終える前に仁王くんは私の唇に自分のそれを重ねた。ああ、ファーストキスが今まで一度も話した事の無かった人に奪われてしまった、そう考えながらもゆっくりと仁王くんの顔を見る為、自分の顔を上げれば仁王くんはさっきみたいにはニヤニヤしておらず、真剣な顔をしていて、不覚にも格好いいと思ってしまった。そしてあの整った顔と綺麗な声で「ずっと前から好いとうよ、」なんて耳元で囁いてくるもんだから、私は取敢えず頷くしかなかった。
詐欺師の嘘の真相
何年か前に運営してたtnsサイトから