家に帰ればエプロンを付けた主夫のような男が毎日必ず「お帰り」と私を出迎えてくれる。しかし残念ながらその"主夫のような男"は私の恋人でも旦那でも無い、私の弟である。弟は大学を終えたばかりで仕事に就いてはいないが、仕事で忙しくて家事にまで手が回らない私に代わって家の事は全てしてくれている。

「おー、お帰り!」
「サッチ、ご飯!」
「帰って来て一言目がそれかよ」

 笑いながらサッチは料理をテーブルに持ってきてくれた。サッチは母からのDNAを受け継いだのか料理が驚く程上手い(私は目玉焼きすらも作れないのに)美味しそうな料理に思わず頬が緩んでしまう。サッチはそんな私を見ると「ニヤけてる、ニヤけてる」と私の頬を引っ張ってきた。サッチが私の向かいの席に座ったのを確認して、いただきます!と言い私はサッチの作ってくれた料理にかぶりつく。

「毎度の事ながら美味しいよね、サッチの料理って」
「褒めてもデザートなんか出て来ねえぞ」
「いつも出て来ない癖に!」
「あー姉ちゃん忘れてやがる、この前プリン作ってやっただろ!」
「…プリンはデザートじゃないもん」
「何だそりゃ」

 視線を泳がせながらもう一口料理を口に運べばサッチは呆れたように笑った。サッチの指を見てみれば切り傷などが何個かあって、何の傷も無い、怠け者の手をした私と比べて断然女らしいような気がした。…え、それは悲しい!

「てかサッチって良く考えてみれば女の子にモテる要素持ってるよね」
「やっと姉ちゃんも俺の魅力に気付いたか」
「無職だけどね」
「うっせ」
「でもまあ、料理が出来たら男はそれだけでモテるよ」
「…まあ、俺は彼女とかはいらねェかな」
「え、何で!」

 この前サッチの部屋入ったら普通にエロ本とか散乱してたから女の子大好きかと思ってたけど、予想外の返事にびっくりしてしまう。てっきりサッチも女の子とデートしたり、そりゃやっぱりお年頃だしエッチな事もしたいのかと思ってたけどどうやらそうでも無いらしい。

「せっかくモテる要素あるのに勿体無いなあ」
「だって俺が彼女作ったり結婚したりしたら姉ちゃん困んだろ」
「あ、それは確かに。って言ってもお姉ちゃんだって弟に恋愛より自分のご飯作る事を優先させる程酷い人間じゃないし!」
「いいんだよ、姉ちゃんどうせ俺がいねェとまともなモン食えねえだろうし」
「あのねえ!」

 行儀悪いのも承知で持っていたスプーンでサッチを指せば、サッチはスプーンを持つ私の手首を引っ張って私の頭を自分の方へと近づけ、耳元で囁いた。

「嘘、俺が姉ちゃんと一緒にいてェだけ」



弟×姉/前サイト「処女男子」から
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