接待とか、お得意様とか、そういうの大事だと上の人は言うけど、私はぶっちゃけるとどうでもいい。あの禿げたいやしい目をしたおっさん達に顔の筋肉ギチギチにしながら作り笑いして、一生懸命頭下げて何が楽しいんだよと上の人の言われた通りにする自分にそう問う。心でいくら毒づいても結局はこの禿げ太ったおっさん達の下に位置する私は必死に頭を下げるしかないのだ。

「大丈夫かよい?」

 接待接待接待。ただの禿げたおっさん達のお相手。そんな毎日が嫌になって同僚と飲みに行った。自棄酒する気満々で居酒屋に入り、友達と愚痴っていたのだが、いつの間にか私は寝ていたらしく、私は気持ちの良い揺れで目が覚めた。目をゆっくり開きぼやっとする視界を少しずつはっきりさせていくと目の前で見慣れた髪が揺れるのが見えた。

「、マルコさん…?って、ええええ!」
「静かにしろよい」

 すいません、と小さく謝ればマルコさんは静かに笑った。(と思うんだけど気のせいだろうか)静かにしろとは言われたが、今の私は丁度マルコさんにおんぶされてる状態で、静かにしてようとも必死に降りようと私は暴れる。

「マ、マルコさん、もう降ろしてもいいですから、!」
「静かにしてろっつったろい」
「いやでもマルコさ、」
「あんなに飲んでてまともに歩ける訳が無いだろい」

 そう言われハッと気付く。そうだ、おんぶされてるとかそういう事よりも何でまずマルコさんがいるか不思議に思わなかったんだろうか。同じ居酒屋にいたのか聞けばマルコさんはカウンターを通りかかったらお前の同僚に引き止められたんだよいと言ってきた。それで私の同僚がマルコさんに私を送るように頼んだ、って訳か…ああ、同僚め…!
 本当ごめんなさいと言いもう一度降りようと試みたが、今度は流石にマルコさんも頭に来たのか上体を前に思い切り倒し、私が思わず落ちそうになった所を見て大笑いしていた。

「マルコさん…!心臓に悪いですよ…!」
「お前よォ、」
「?」
「仕事で苦労してたんなら何で俺に言わなかったんだよい」

 さっきまで大笑いしてたマルコさんはどこに行ったのか、マルコさんは急に真剣な顔つきになって私にそう問いかけてきた。私はと言えばマルコさんの首下に額を埋めて黙り込んでいた。

「俺はお前の上司なんだよい」
「分かってます、」
「なら何で言わねえ」
「マルコさんを上司として慕ってるからですよ、仕事でも十分迷惑かけてるのにそんな接待とかが嫌だなんて言える訳がありません、」
「…そうかよい、でもな、」

 幸か不幸かその時大型トラックが私達のすぐ近くを通り、大きくクラクションを鳴らしていった。その為マルコさんがでもな、の後に言った言葉は微かにしか聞こえなかったが、「惚れた女の悩む姿なんか見たくねえんだよい」とそれらしき言葉を呟いたのは気のせいだろうか。
 マルコさんは言葉を終えたのか、急に止まり、私を降ろさせた(やっぱりダイエットした方がいいかな)気付けば私の住むアパートの前でマルコさんはお疲れさんと呟いた。私もお礼を返せば、少し気まずい沈黙が流れた。沈黙はすぐにマルコさんが破ったが、「、でも今までよく我慢したな」とマルコさんが優しい笑みで私の頭をくしゃくしゃと撫で、おまけに額にキスまで落としてくるもんだから私の胸の鼓動は早まると同時に私の涙は両目から溢れ出した。



上司×部下/前サイト「処女男子」から
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -