ああ、今日も寒いなあ。ベッドから出るのも億劫になって、どうやって起きようかなんて考えながら寝返りを打ったら静かに寝息を立てて眠る彼女が視界に入った。また僕のベッドに潜り込んできたのか、と呆れながらも「なまえ、」と起こせば彼女は唸り声を上げながらゆっくり目を開いた。僕の顔が見えると安心したのか、いつもみたくヘラッと笑った。全くこの人僕より年上なのに何でこんな子供っぽいのかなあ。

「ねえ、起きて」
「んん、嫌だ」
「嫌だじゃないよ、僕お腹空いたし」
「アイス君が朝ご飯作って」
「嫌だよ、何で僕が」

 お願い、なんてあくびしながら言われてる人の為に僕だって作りたくないのに。しょうがないなあ、そう思いながら何だかんだベッドから出てキッチンに向かってしまう僕もやっぱり彼女には甘い。朝ご飯作って、なんて言われても僕だってそこまで料理上手な訳じゃないんだけど。レシピが簡単なパンケーキを作る事にして、早速作業に取り掛かる。北欧独特の薄いパンケーキを何枚も重ねて皿に置く。何があったかなあ、と冷蔵庫を開けて中を確かめていると、なまえがようやくベッドから出たらしく、ザーと洗面所の水が流れるのが聞こえた。
 冷蔵庫の中にあったベリーをお皿に適当な数だけ出して、ついでに棚からリンゴンベリー、ブルーベリー、オレンジマーマレードといくつかジャムを取り出す。「アイス君の朝ご飯〜」なんて呑気にパジャマのままキッチンに入ってきたなまえに飲み物はどうすれば聞けば、「アイス君と一緒の!」なんて笑顔で言ってきたから何だか照れてしまって急いで彼女から顔を背ける。ああ、ニヤけるな自分!と必死で下唇を噛みながら、二つのマグにホットミルクを注いだ。

「アイスくん、今日仕事は?」
「昨日全部終わらせた」
「へえ、珍しい」
「僕はなまえみたいに怠けてないから」
「あ、もしかして私と一緒にいたかったから終わらせたの?」

 思わずホットミルクを吹きだしそうになったが、堪えてホットミルクを飲み込む。「何言ってんの!?」と反論すれば、なまえはニヤニヤしながら意味深に頷いていた。絶対勘違いしてるし、ああもう、本当ムカつく!違うと何回言っても彼女は簡単にあしらって、全く僕の話を聞いていない。

「そっかあ、アイス君は私と一緒にいたかったんだねえ」
「だから違うってば」
「今日は一緒に出かけよっか、久しぶりに」

 まだ承諾してないのに「この前街を歩いてたらアイスくんぴったりの雑貨屋さんがあったんだよ」、と話す彼女はとても嬉しそうだ。今日はあそことー、あとあそこにも行かなきゃねえ!なんて勝手に今日のプランを立ててるなまえを放って自分のお皿をシンクへと運んでいく。「いいから早く食べ終えてよ」、自分のお皿を洗いながらそう言えば、なまえは黙って、少ししょんぼりしながらお皿をシンクへと運んできた。何だかふて腐れたような顔をしている彼女は本当子供みたいだなあ、全くもう。

「…行くんじゃないの」
「え?」
「だから今日は街に行くんでしょ、なら早く着替えてきてよ」

 嬉しさで少し震えそうな声を彼女に気付かれないように、余裕な態度を装って彼女に着替えるように促す。てっきり僕が怒っていると思ってたであろう彼女は、急に目を輝かせて僕に抱きついてきた。ぎゅうっとキツく抱きしめてきた後、「着替えてくる!」と足音を立てながら彼女は自分の部屋へと駆けていった。部屋のドアが閉まった音が聞こえたと同時に、何だか一気に気が抜けてしまって、泡々なスポンジを片手に持ったまま床にしゃがみこむ。ノーレがいなくて本当良かった、真っ赤な、しかも頬が緩みきっている今の僕を見たらきっと一生をかけてからかってくるだろうから。



20111014/アナナスと林檎のお菓子
title by 革命の養女
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