「朝帰りしちゃったー」

 大学にある中庭で一人くつろいでいれば、なまえが少し疲れた表情で俺の元へやってきた。テヘ☆なんて効果音がよく似合う笑顔と一緒になまえは俺に冒頭にある言葉を放ってきた。いや、別に付き合ってる訳じゃないし、俺が気にするような事でも無えんだけど。やっぱりずっと幼馴染として仲良くやってきてる、しかも俺が密かに想いを寄せているなまえが朝帰りだなんて。

「誰と?友達?」
「うん、昨日アントーニョとギルと飲みに行って、そのままアントーニョ家泊まってきた」
「は?」

 いやいや、普通男友達の家で寝泊まりなんかしないでしょ。いくらアントーニョと仲が良いからってそりゃいくらなんでも…「どういう事?お兄さんついていけないんだけど」と苦笑いしながらなまえに聞けば、頭上にハテナマークを浮かばせた。俺の方が分からないよ!(ていうか何でトーニョもプーちゃんもお兄さんを誘ってくれなかったの、泣きそうなんだけど!)
 大体寝泊りしなきゃいけない状況だったら普通に俺ん家に来ればいいじゃないの、と思いながら溜息をつく。もうこれだから鈍感な女の子は大変なんだよ。焦る俺とは逆になまえは呑気に俺の横で「お腹空いたあ」なんて呟いている。本当無防備すぎてお兄さんの手に負えないんだけどどうすればいいの。俺が額に手を当てて、溜息をついていたせいかなまえは自分が何かいけない事をしたと思ったらしく、「フランシス、ごめん?」と疑問系ながらも謝ってきた。

「…本当世話のかかる子だよ」
「…残念ながら昔からこんなんです」
「知ってる」

 何かどうしようも無くなって、何の予告も無しに隣に座るなまえを横から抱きしめれば「うおお…?」となまえは情けない声を出した。無言で抱きしめ続けてればなまえは俺が悩みを抱えてると思ったらしく(まあ実際なまえの事で悩んでるんだけど)、俺の背中をよしよしと撫でてきた。やっぱりお兄さんはこの子が好きだ、なんて改めて実感しながらパッとなまえから体を離した。お得意の作り笑いで(何故かお坊ちゃんにはいつもバレるけど)なまえを見つめ、えい!と彼女の両頬を引っ張ってやった。

「いひゃいいひゃい!!」
「悪い子にはお仕置き」

 ギブギブ!と俺の太ももをタップするなまえに気付き、頬から手を離してやる。彼氏じゃない俺にこんな事言う資格無いけど、なんて珍しくネガティブ思考になりながらも「これから男の家で寝泊り禁止だからね」と痛む頬を両手で押さえるなまえに言った。はーいなんて小さい子供みたいに返事をしたなまえに「いい子いい子」と頭を撫でてやればニカッと可愛らしい笑顔を見せてくれた。さっきまで落ち込んでたのになまえの笑顔を見た瞬間元気になった自分がいて、思わず笑ってしまう。取敢えず後でトーニョとプーちゃんに説教しなくちゃ、そう思いながら俺はもう一度なまえの頭をぐしゃぐしゃ撫でてやった。



20111008/ライムライトで作った星
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