屋上に来る人はどこかしら変わった人が多い。現実世界でも漫画の世界でも屋上にいる人は大体不良であったり、少し変態的であったり、何を考えているのか分からない人であったり。数学の授業がかったるくて屋上にサボりに来た私もその変人の例外ではないと思うが、私の真横で煙草を吸っているこの教師も教師の中では群を抜いての変わった人であると言い切れる。

「今授業中だって知ってるか?」
「校内は喫煙禁止だって知ってますか?」

 俺は教師だから良いんだよ、なんて意味の分からない言い訳をしてこの隣に座る先生、キッド先生は煙草を床に押し付け、火を消した。
 教師なら仕事しろ、校則守れ、ていうか髪染めんな、などと突っ込み所が沢山ある、教師とは思えないこの人は悪い噂で有名である。私はじっくり見たことはないが、顔が良いと好評のこの人は女生徒から気に入られている事を良い事に女生徒に手を出している、と前に一度聞いたことがある。ファンである私の友達は相当ショックを受けていたが、私は結局教師も生徒も一緒なんだと妙な安心感を覚えた。

「お前さ、」

 目を閉じて寝転がっていた私に急にキッド先生が声をかけてきた。声のした方に顔を向ければキッド先生は丁度何本目かの煙草に火をつけている所だった。何でしょうか、と私が返事したのと同時に先生は口から空に向かって煙を出した。

「あの禿臭ェ教師らのお気に入りの優等生、だろ」
「気に入られてるのかは知りませんがそうでしょうね、」
「そんな優等生ちゃんがこんな所で何やってんだよ」

 優等生はサボんねェもんだろ、と先生は嫌味ったらしく笑ってきた。私は上半身を上げ、両腕を後ろに放って後ろに重心をかけた。またハァ、と煙を口から出すキッド先生を見ながら私は「優等生だって疲れるんですよ」と答えた。煙草を床に押し付けるジリジリという音と先生のへェという少し笑みを含んだ返事が聞こえたと思ったら、次の瞬間には私は先生に押し倒されている状態になっていた。

「な、にしてるんですか、」
「そんな優等生に一つ教えてやるよ」

 キッド先生は口角を上げてそう言うと、私の唇に自分のそれを重ね合わせた。驚愕した私とは反対に先程よりもいやらしくニヤリと口に弧を描いた目の前のこの教師はさっさとクビになれば良いと思った。

「教師と屋上で二人きりになった時はこんな事になんだよ、」



20110102/天使面の悪魔
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