「あああ、あ、あの、どどどなた様でしょうか」
「急な気温変化でついに頭イカれたか」
「いやいやだってあなたはキッドじゃないですよね!だって私の知ってるユースタス・マジカオフザケテル・キッドは眼鏡なんかかけませんもの!」
「潰すぞ」

 久しぶりに隣のクラスに、ローに会いに来たら(会いに来たというか借りパクしようと思ってた漫画を返せって昨日脅されて渋々自分の命の為に来てやったというか何というか…)、確かキッドの席であった窓際一番後ろの席にキッドに似た眼鏡男子がいた。赤髪に眉間の皺に白い肌。これだけであればすぐにキッドだ!と断定出来るのだが、その"キッドの席"に座る眼鏡男子はそれだけでなく、今やモテアイテムとも言える眼鏡をかけている。いや、キッドなんだろうけどキッドと認めたくないっていうか何ていうか…とローに話していれば、いつも通り鬱陶しそうな目で見られた。

「あれはキッドじゃないよね!?」
「うっせェよお前」
「いやいやだってあれは私の知ってるキッドじゃない…!」
「どうせあれだろ、眼鏡かけたユースタスに惚れたが認めたくない、って奴だろ」

 そんな訳ないと言い返そうと思ったのに、言い返せなかったのはきっとローの言ってきた事が図星だったからだろう。自分でもそう思ってるのに未だにあの眼鏡男子がキッドであると認めたくないでいる。そんな私に苛ついたのかローは私のすねを蹴って「とっとと本人に聞いてこい」と言ってきた。結局そうするしか無いよなと自分でもそう思い、キッドの席へと近づく。てかまじすね痛い。
 それで冒頭に至る訳だが。私の言い方が悪かったのかキッドは片手で私の頭を掴み、握り潰そうとしてきた。「痛い痛い、まじで耳の穴とかから脳味噌出る!出る!」と自分のクラスでもない教室で大声を出しながら痛がる自分に女子力なんぞある訳が無い。しばらくして離してくれたキッドに涙目ながらも向き直る。

「大体何でキッドが眼鏡かけてんの!?」
「目悪ィからに決まってんだろ」
「いや私そんなの知らない!」
「まあ教えてなかったからな」

 自分の席に座り、眼鏡をかけたまま頬杖をして私の方を見上げるキッドと何だか目を合わせるのが気まずくて、目をそらしまくっていたらキッドが噴出して笑い出した。何だこの失礼な奴!と眉間に皺を寄せてキッドを睨んでやれば、キッドは更に笑った。

「え、何で!?そんなに酷い顔してる!?」
「、悪ィ、ククッ、お前分かりやすすぎ」

 お前絶対眼鏡かけてる俺好きだろ、わざとらしく眼鏡をクイッと上げながらそう言ったキッドをここまで憎たらしく思った事は無いが、図星だし本当格好いいしで私はとにかく赤面する他無かった。
 何かもうどうでも良くなり開き直って「そうだよ!本当見てるだけでドキドキしてきて本当嫌、」と言ってやった。流石に最後らへんは恥ずかしくなってごにょごにょ口篭ってしまったが、それでもキッドには聞こえてたしく、キッドは先程まで盛大に笑っていたのに今では私を目上げて口を開いたまま呆けている。するとみるみる内にキッドの顔が赤くなった上に、後ろの方からローが喉元で笑う声が聞こえてきたので、私は更に赤くなってしまい、取敢えずもう黙って、もう少しの間眼鏡をかけたキッドを堪能しようと思った。



20110921/魔法使いのワンピース
title by alkalism
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