「お兄さんの家で勝手に宿題会開くのやめてくれないかな」

 「だって分かんねえもん」「ギルが分かんないなら私も分かんないし」「なまえが来るって言うたから来てん」、三人同時にそう言ってきたから、もうどうでも良くなり、取敢えず家に上がらせる。この前菊から貰った麦茶を淹れて部屋に戻れば、案の定兄さんの昔のアルバム等を勝手に出されていた。まあ、分かってたけどね、お兄さんいつの時代も麗しいから別に見られたっていいしね別に。

「見ろよこのフランシス!!髪邪魔!!邪魔!!」
「あかんやろこれはフランシス!!あかん、腹痛い!!」
「フランシス、アイスちょうだーい」

 好き勝手言ってくれる馬鹿二人を置いて、取敢えずなまえの為にアイスを冷凍庫から取り出し渡す。アイスを口にくわえながら宿題に取り掛かろうとするなまえの横に座り、頬杖をつきながら眺めていれば、しばらくしてから急にバッと見つめ返された。見すぎてたかな。

「お兄さんびっくりしたあ、どうしたの」
「いや、フランシスの視線を感じたから」
「あかんでなまえ!そいつ絶対下心あるで!」

 図星ながらもアントーニョには言われたくないなあと思いながら、「そうそう、お兄さんも男だからね、いつなまえを襲おうか迷ってたの」なんて笑いながら冗談でそう言った。アントーニョもギルも「お前最低ー!」なんていつも通りの反応するから、なまえもいつもみたいに一緒にノッて、シャツを開ける真似をして「いつでもおk!」みたいな事を言ってくると思ってた。なのに、今日のなまえの反応が違っていて。心無しか顔を赤くさせてるもんだから、俺は冷静に「ああ、俺の事が好きなのか」と悟った。ギルもアントーニョも赤くなっているなまえに驚いていて、ギルなんかは口をパクパクさせていた。
 一テンポ遅れた所でなまえは「、フランシスの変態ー!」なんて顔を真っ赤にさせたまま言ってきた。変な風に笑いながら、ごめんごめん、と小さな声で謝るなまえの頭に手を伸ばせば、なまえはビクリと肩を揺らした。気をきかしてくれたのか、アントーニョは「麦茶淹れてくるわ」と未だ硬直したギルを引き連れて部屋を出て行った。

「あの、なまえ?」
「ごめんごめん、ちょっと熱っぽいだけだから、大丈夫だから」

 女の子の恋愛感情には敏感なお兄さんにはそう思えねえけどなあ。目の前で顔を真っ赤にするなまえを見て、改めて可愛いと思った。ただごめんごめん、と何度も繰り返し呟きながら、もう一度宿題に取り掛かろうとするなまえの髪を柔らかく一撫でしてこっちを向かせれば、なまえはフランシス、と一言俺の名前を呼んだ。
 こんな時くらいお兄さんに格好つけさせてよ、そういう意味を込めてなまえの手首を取り、「俺、なまえの事好きだよ」と自分で言うのもあれだが、いつになく真面目な顔でそう言った。そうするとなまえは更に顔を真っ赤にさせてついには顔を両手で覆い隠そうとしだした。ああ、もうお兄さんこんな子を前によくも今まで我慢出来てたなあなんて心の中で自分を褒めた。アントーニョとギルが途中で気を遣って出て行ってくれて助かった、こんな可愛いなまえの顔なんてあの二人に見せられやしない。



20110918/オーロラを束ねよう
title by alkalism
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テーマ「人外ファンタジー」
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