「何でやねん」

 お先に〜と言った風呂上りのなまえは見たら、何故かなまえは俺のT-シャツと下着だけの格好をしとって、思わず冒頭の言葉がスルッと口から零れてしまった。普通の男やったら「キャー、カレシャツー!モエルー!」なんて反応するんやろうけど、俺はそれよりもまずなまえが俺のシャツを着ているという今の状況が非常に理解しがたい。が、しかし流石に俺でも男として反応してまう。下半身事情とか色々あるけど色々反応してまう、これはあかん。

「いやほんまに何で俺のシャツ着てるん」
「私の洗濯中なんだもん」
「お前俺が男やって事知ってるよな?」
「はいはい知ってます知ってます、もう早くお風呂入ってきなよ」

 こいつは俺に恨みでもあんねやろか。冷蔵庫から水のペットボトルをがぶ飲みする姿は流石に女らしいとは言えへんけど、何かもうほんまこいつに恋人とは言えキュン☆ってしてしまう自分が嫌んなる。この姿を最初見た時は「何やっとんのこいつ」としか思わへんかったけど、今となってはもう「彼シャツご馳走様」としか言えへん。取敢えず女としての意識が足りてないなまえに俺は正座して、俺に説教されるように言うた。

「よう聞け、お前は女やねんぞ」
「ほい」
「ほんで俺は男、性別ちゃうねんで」
「ほいほい」
「俺もいつまで我慢出来るか分からへんねん」
「ほう」
「せやから今すぐ着替えて来い!」

 俺が大きい声を出して、なまえの部屋を指差すとなまえは予想通り「えー」と嫌そうな顔をした。どんだけ俺を苦しめたいねんこいつ。ハァ、と呆れて溜息をつけばなまえは急に勢いよく立ち上がり、俺の髪をぐしゃぐしゃにしてきよった。俺の美髪に何すんねん、となまえを見れば膨れ面をしていた。俺何かしたんかな、なんて俺別に何もしてへんのに、俺が悪ないの分かりきってんのに罪悪感が湧き上がる。怒ってる理由を聞こうと、部屋に戻ろうとするなまえの手首を掴めば、なまえは眉間に皺を少し寄せながら急に大声を出してきた。

「誘ってたんだよ、気づけ!アホ真子!ハゲ!死ね!」

 真っ赤になりながらもそう言うなまえにまた不覚ながらも可愛いと思ってしまい、思わずぎゅっとその細い腰に抱きつく。取敢えずあれやんな、向こうが誘ってきたって事は俺も誘いに乗って良いってことやんな?て事でいただきます。



20110815/顰め面に花
title by alkalism
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