キッドが私の家を訪れて数日が経ち、"自分意識しすぎワロタ"と一人落ち込んでるとメールの受信音が聞こえた。携帯を開くとキッドからメールが来ていて開けば、今夜オムライスにすっから家来い、とだけ書かれていた。きっとオムライスなんか口実でキッドの事だから、再度何で最近の私の様子がおかしいのか聞いてくるつもりだろう。そう考えると行きたくなくなってしまったが、キッドを心配させる訳にもいかないし、オムライスも食べれるしという事で私は行くことにした(私はオムライスが食べられないという女子力なんぞ持ち得てない)
 適当な時間にキッドの家に勝手に上がり込めば、キッドがちょうどご飯を作ってるとこだった。キッドがもう少しで出来上がると言うので、私はいつもしてたようにそこら辺に転がった漫画を読んで暇を潰した。

「おい、出来たぞ」

 キッドの一言で漫画を放り投げ、テーブルへと急ぐ。久しぶりのキッドのオムライスに胸が躍る。運ばれたオムライスをキッドがちゃんと椅子に座ったのを確認してから、ゆっくりと食していく。キッドの方はちょびちょびと食べているが、私が食べている間は無言で頬杖をしながら私を見ていた。

「…何でござるか」
「外人かぶれキャラはどこ行った」
「…ハッ!ワッツ!ワッツァップ!シット!ワッツ!(訳:What! What's up! shit! what!)」
「やっぱり気持ち悪ィからやめてくれ」
「あ、はい、すいません」
「…まだ何があったか教えてくんねェのか」

 最後の一口であったオムライスをしっかり味わいながら、何も言い返さずに私はひたすらオムライスを噛んだ。食べ終わった後にキッドの方を見れば不機嫌そうな顔をしていた。何かもうこれ他の人が見たら失禁するんじゃないのって位、元々目つきの悪い目を更に細めて、眉間に皺を寄せてこっちを見ていた。でもどこか寂しげな雰囲気もあり、私はこんなにも心配してくれるキッドに罪悪感を感じ、決心した。

「…いや、あのまあ結構深刻な状態でして…」
「何がだよ」
「あの、なまえさんの無さそうで実はある脳味噌がですね…」
「で、何があったんだ」
「それを本当にキッドが知りたいか…」
「いいから言えっつってんだよ」
「…Final Answer?」
「無駄に格好つけんな、早く言え」

 せっかくネイティブ的発音で聞いたのにスルーされた事に若干怒りを覚えたが、寧ろそのスルーのお陰で全てがどうでも良くなった。一つ大きく深呼吸をして、「私、キッドが好きみたいなんだよね」とあまり意識せずにそう素直に伝えた。どうせキッドの事だから驚いておどおどしたリアクションを取るだろうと思ったのに、目の前のこいつは私が言い終えると同時に額に手を押し当て、寧ろ残念がった。そんなに嫌か!

「えぇ…そりゃ迷惑だろうなとは思ったけど、流石の私もそこまでうざがられると泣くよ!」
「違ェ、そういう事じゃねえ」
「へ?」

 うざがってる訳じゃないと分かった私にキッドは、呆れたように溜息をついた。そして"昔した約束"について話し始めた。私は全く覚えていなかったが、どうやら私はキッドに小さい頃プロポーズをして事があるらしく(何たる黒歴史!)、そこではキッドも親がいて返事をしなかったらしいが、後で親がいない間に私に"お前が20になったら俺からしてやる"と嬉しい事を言ってくれた、らしい。私は全くと言っていい程覚えてないのだが、キッドはその時のことを鮮明に覚えてるらしく、真っ赤になりながら話してくれた。しかもどうやら本当に私が二十歳になった時にするつもりだったらしく、"もう少しでお前の誕生日だったのに先に言いやがって、死ね"と逆ギレされた。

「いや何かもう本当ごめんね」
「…別に良い、俺もまだお前が俺の事好きなのか分かんなかったしな」
「…何か告白しなきゃ良かったって後悔し始めてんだけど」
「何でだよ」
「、でもキッドはまだ私の事好きなの?」
「当たり前だろ」
「でも女の子紹介してあげるって言った時、女の子に興味ないって、」
「お前がいんのに他の女なんか気にしてられっか」

 変な所で男前なキッドに思わず私は顔を両手で覆い隠して、照れてしまった。そんな私なんかお構いなしにキッドは私の両手を掴み、顔から離した。そして前を見ればいつもと違って真剣な表情をしたキッドが居て、私の両手を握ったまま口を開いた。

「お前が好きだ」



20110805/306号室
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