キッドを意識し始めて以来、私はキッドの家に行かなくなった。一週間くらいキッドの家に行かないことはたまにあるからかキッドも特に何も言って来なかったが、流石に二週間ほど行かないでいると、おかしいと思ったのかキッドが私の家にやってきた。

「…や、やあ、今日も可愛いね子猫ちゃん!!」
「何キャラだよ」
「いやちょっと最近外人かぶれキャラが自分の中でマイブームで!!ヘイ、ベイベー!」
「…へえ」
「え、ちょ、まじでヒかないですいませんした私が悪かった」
「つうかキャラなんてどうでも良いんだよ」
「私の存在意義を否定されてるなう、と」
「…お前最近何か様子おかしくねえか?」

 ようやく本題を出してきたキッド(まあ私がふざけたせいなんだが)。若干だるそうにジャージに手を突っ込みながら私の顔を覗き込んでくるキッドは、相変わらず前髪をシュシュで上げていて、黒斑眼鏡もかけていた。
 冒頭のおかしなテンションの後に黙り込むのもどうかと思い、取敢えずキッドに家に上がるように言った(言ってから部屋が存外汚れていたことに気付いて後悔したが)ソファに座らせ、お茶でも入れようとキッチンに足を向ければ、"なまえ"と名前を呼ばれ振り返ってみれば、ちょいちょいと手招きをされリビングに戻るよう促された。

「で、お前最近何かあったのか」
「いや、何もないですって」
「何で最近俺ん家に来ねえんだ」
「強いて言うならそれはレッツ☆オムライスの気分じゃないからです」

 目を合わせようとしない私に気を悪くしたのか、キッドは"なまえ"、ともう一度名前を呼んできた。渋々顔を上げてキッドを見れば真剣な顔をしていて、次には"俺に嘘つくんじゃねェ"とまで言われてしまった。お前のせいで悩んでるんじゃいボケェ!と叫ぶ訳にもいかず、取敢えず多忙だっただけ、とまた嘘をついた。
 キッドはもうこれ以上聞いても意味無いと分かったのか、立ち上がって自分の家へと戻って行った(徒歩五秒だが)。久しぶりに会ったキッドは相変わらずで何処も変わってなくて、何だかキッド一人のせいでここまで私生活めちゃくちゃにされてる自分が恥ずかしくなった、と同時に私が家に行かなくても結構平気そうなキッドに寂しく思った。



20110805/306号室
更に続くというマジック
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