部屋をノックした。そしたら扉が開いた。出てきたのはサッチ。サッチの部屋をノックしたんだからサッチが出てくるのは当たり前なのだが、サッチが身につけてるものは手に持ってるタオルと腰に巻いたバスタオル。

「ごめんなさいすいません後で出直します」

 予想以上に格好よかったリーゼント無しのサッチは色気があって、いつもの陽気なサッチとは違って大人の雰囲気を漂わせていた。髪から滴る水が床に落ちる。水に滴る男、という言葉も今はサッチの為に作られたんではないのかと錯覚してしまう程、風呂上りのサッチは格好よかった。

「どこ行くんだよ、入ればいいだろ」
「いやでも風呂上りだしタオル一枚だしリーゼントないし」
「取敢えず入れ」
「…はい」

 手を引かれてサッチの部屋の中に入れられた私は何故かいつも以上に緊張していた。サッチの部屋にはもう数え切れないくらい来たことあるのに、風呂場から香るシャンプーの匂いが何故だか私を更に緊張させた。当のサッチはというと、タオル一枚のまま、自分の部屋に置いてある小さい冷蔵庫から水を取り出し飲んでいた。手元にあるタオルは何の為にあるんだと突っ込みたくなるくらい、サッチの髪の毛は濡れていた。
 私がサッチを凝視していたせいか、サッチは私の視線に気付いた。瞬間、自分でも分かるくらい熱くなる私の顔。きっと真っ赤になっているんだろう、サッチがニヤニヤしながら近づいてくる。「どうしたよ?」きっとこの人は分かってやっている。

「抱きたくなった?」
「馬鹿サッチ。」
「あれ、抱きたくねェの?」
「そうやって誰にでも抱かせてんの?最低ー」
「馬鹿言うなよ。誰にでも言う訳ねェだろ」
「じゃあ、何で私に言ってんのさ」
「そりゃあお前、俺がお前に抱かれたいからだろ」

 今何て言ったか聞こうと目線を上げればサッチの真剣な顔。サッチは私を見下すように立っている為、サッチの髪の毛から垂れる水が私の顔にポツポツと落ちる。私とサッチの目線が絡んだ後、サッチは髪を後ろにかきあげ、私に自分の顔を近づけた。「大好きだっつってんだよ」、とサッチは私の耳元でそう囁くとキスを落としてきた。もう逃げられない、と思った。



20101021/蟻地獄
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