すっかり重くなってしまった私の瞼がまるで私に睡眠を強要するみたいに、下りてくる。先ほどまでずっと使っていた携帯をベッドの脇テーブルに置き、体を起こして電気を消そうとランプに手を伸ばす。すると先ほどまでのっとられたみたいに自分が使っていた携帯が明るく点滅し出し、ヴーヴーと独特なバイブ音が部屋中に響いた。誰からかも確認せずに電話を取れば「もしもし」と廉造の聞きなれた声が電話越しに聞こえた。

「もしもし、どないしたんこんな時間に」
「いやー、何や寂しい夜ってたまにあるやろ」
「それで私にかけてきたんか、睡眠不足は美肌の敵やねんで」
「堪忍なあ、せやかて寂しい夜にはやっぱり自分の好いとう人の声聞きたいやんか」

 それから私達は何十分間かたわいも無い話をした。坊とある女の子が最近良い感じや、とか燐が相変わらず雪ちゃんに怒られてばっかだとか。色々なことを話してる内に廉造も寂しくなんか無くなってきたみたいで、通話中よう笑うようになった。
 祓魔塾で一緒だった皆の話をした後は、金造さんに全然彼女が出来へんと廉造が教えてくれ、二人で盛大に爆笑した。ふう、としばらくしてようやくお互い笑いも止まり、落ち着いた所で廉造が先に口を開いた。

「そういや、」
「んー?」
「結婚せぇへん?」

 まるで高校生同士がデートに誘うかのようなノリでそう言ってきた廉造に驚き、思わず携帯を落としそうになってしまった。それよりも「結婚せぇへん」だなんて。廉造は全然応答しない私に何かあったのかと心配したのか、電話越しに「おーい」と廉造が私に呼びかける声が聞こえた。

「あ、ああ、ごめんごめん…って何でそんな重要なことを電話で言うねん!」
「堪忍、堪忍、寂しい夜やったって言うたでしょう」
「せやけど、それと結婚とどう関係あるん」
「いやあ、何や寂しかったからなまえのこと考えててん。めっちゃ愛しい、とかめっちゃ声聴きたい、とか思てなあ。せやから電話したなって、そんならついでに結婚もしたいなあ思て」

 いつもみたいなノリでへらへらと、しかしどこか意味深な含みのある笑い声を発しながら廉造はそう言った。私はと言うと不覚ながらも嬉しい気持ちで胸がいっぱいで、若干頬を緩ませながら口を開いた。

「普通逆やろ、結婚するついでに電話するとか…それはそって変やけども、」
「はは、でもそんな俺嫌いではおまへんやろ」
「…」
「なあ、」

 廉造は急に真剣な様子でまた口を開いた。もうお互い笑っていないし、未だに短い沈黙が流れているが、不思議と気まずくは感じなくて、寧ろどちらもこれからの事を既に知っているかのようにお互い黙りこくっていた。しかしそんな沈黙もやはり廉造が破るのだった。廉造はもう一度「なまえ、」と私の名前を呼ぶと、電話越しに彼が大きく息を吸ってる所が聞こえた。外を見れば月が綺麗に光っていた。

「なあ、もういっぺん言いるけど、」
「うん、」
「結婚しよか」
「…うん」



20110613/今宵を世界が包む
title by CELESTE
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