「財前光くんってなまえとあのボッキュッボンなかなこちゃんと付き合ってるらしいで」

 今朝友達に教えて貰ったことをそのまま彼氏である財前光、つまりは二股をしてると噂されている男に伝えた。私が言い終えたと同時に光は鼻で笑った。笑ったはええけど、否定せえへんってどういうこっちゃねん。

「え、何、ほんまなん?」
「俺があの三年女子と付き合ってたらどんなに幸せやったか」
「ほんまお前、一発殴らせろや」

 殴ろうとすればひょいと横にかわされた。こいつ、いっぺん死んだらええのに(それで生き返ってくれな困るけど)。私かてBカップくらいはあるねん!と光の真ん前で叫んでやれば、そんなペチャパイでBとか全国のBに謝りやと答えられた。何やねん、ほんっま!確かにBやなくてAやけど!いや、Aの何が悪いねん!アルファベットの一番最初やねんぞ!
 心の中で光に必死に抗議してると、光は百面相をしてる私が面白いと思ったのか、急に笑い出した。百面相で笑ったのかと思ってんけど、何か寧ろ何の事で笑われてるのか分からへん。え、もしかして私お笑いのセンスあるんとちゃう?

「先輩、ほんまおもろいっスわ」
「Bカップて嘘ついたとこが?」
「いや、嘘ついたん知ってるに決まってるやん」
「死ね」
「生きる」

 口喧嘩になったら光には絶対に勝てんことをは分かってんねんけど、黙りこくったら負けたん認めたみたいで、つい反撃してしまう。ちゅーかほんまAカップの何があかんねん。それよりも元々話してた香苗ちゃんの話はどうなったんや。ふと前を見れば、光がまだくくっと喉を鳴らしながら笑っとった。

「何や」
「先輩ってほんま気持ち悪いっスわ」
「ありがとう、私も光のこと好きやで」
「好きなんて言うてませんけど」
「光の心の声が聞こえてん」
「あ、やっぱり聞こえてました?先輩ほんまキモイって言ったん」
「キモイって言うてたん?可愛いの間違いやろ」
「寧ろ先輩の頭が間違いやろ」
「死ね」
「生きる」

 結局は私が負ける口喧嘩にそろそろ私が諦め始めた頃、光がまた笑い始めた。机にうなだれとった私は顔だけ上に向ければ、光がじっと見つめてきとったから、めっちゃドキドキした。

「先輩、ほんま馬鹿っスわ」
「私、今日だけでめっちゃ貶されてんけど」
「だって先輩が変な事言うてくるからでしょ」
「せやかて友達が言うてきてんもん、光がかなこちゃんと私の二人と付き合うてるて」

 私がそう言えば、光は笑うことを止めて今度は呆れたように溜息を吐いた。何やこいつ、めっちゃ失礼なやっちゃな。すると光は頬杖をつきながら私を見て口を開いた(相変わらず綺麗な顔しとんなこいつ)。

「心配せんでも俺を満足出来るんは先輩だけですから」

 照れもしないで私の目を真っ直ぐ見てそないな事を言うてきたから、思わず私が恥ずかしくて目をそらしてしもた。でもそれを良く思わなかったのか、光は私の顎を掴んで自分の方に向かせた。

「それにこんなアホで貧乳で気持ち悪い先輩を相手出来るんは俺だけやで」

 光はそう言うと私の頭を撫でてきた。いつもよりぐしゃぐしゃ撫でてきたから、やっぱり多分ちょっと照れてるんやと思う。せやけどそんな事言ったら光の事やから又"ほんま勘違いばっかして、キモイっすわ"とか言うんやろな、そう思いながら、光大好きって言ったったら、光はいつもより小さい声で"んな事知ってますわ、"と呟いた。



20100215/リトルリアル
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