見つめられるだけで心臓が高鳴る、それはつまり自分がその人に恋をしている、という事で良いんだろうか。
 燐と奥村くんが普段使っている旧男子寮にて今現在行われている合宿に私は参加している訳だが、そこには勿論勝呂くんが居て、つまりは志摩くんと子猫丸くんも居て。別に三人が嫌いな訳では無いが(特に勝呂くんなんか勉強の教え方が上手いから尊敬している位だ)、さっきから三人の内の一人、あのピンク色の髪の毛をした男に熱烈とは言い難い視線を送られているのだ。ピンク色の髪の毛をした男とは勝呂くんといつも一緒にいる「志摩廉造」くんの事なのだが、私は別に何もした覚えは無いのに見つめられてるとはこれは一体どういう事だろうか。
 奥村くんの「終了」という声にハッと気付き、急いでまだ途中までしか終えてないプリントの答案を殴り書きのように埋めていく。プリントを提出し、出雲ちゃんやしえみちゃんはお風呂へと向かった、と同時に燐や勝呂くんも自分達の部屋と向かっていった。ふと部屋を見渡せば私と、未だに私を見つめてくる志摩くんしか居らず、何だかきまずい雰囲気になった。

「あ、あの、志摩くん、」
「ん、何?」
「さっきから、その、見つめてますよね?」
「おん、見つめてますよ」
「な、何で?」

 私は恐らく今変な顔をしている。だってさっきからずっと見つめられていて心地良い気分では無い筈なのに、心の中ではどこか嬉しくて、心臓もドキドキしてて、そして心無しか顔も熱い、なのに眉毛はきっと今ハの字になってる。私が何でか聞くと、志摩くんはいつものようにニコニコしながら席を立って私の隣にストンと胡坐をかいて座った。そして私の方に顔をぐーっと近づけてくると思ったら、すぐに離れて机の上に肘を立てて頬杖をついた。

「前々からかいらしい、かいらしいとは思っとったんですけどねえ、」

 志摩くんはそう言うと大きいが、しかし綺麗な手を私の頬に添えてきた。真っ赤になった私の顔は私でも分かる位に熱くなっていて、低体温の志摩くんの手の冷たさが丁度良かった。

「何や最近になって更に可愛くなってはるし、」
「あの、志摩くん、」
「女の子にこれはあかんかもしれないですけど、スタイルもええし、」
「志摩くん、ちょ、近い、」
「でもかいらしいからって油断したらあきまへんよ、」

 「ほんまに気をつけんと食べられますよ、」、いつもと違って真面目な顔をして志摩くんは私の目の前で、そう言った。食べられる?誰に?誰が?そんなことを考える前に志摩くんはパッといつものヘラヘラとした笑顔に戻って、「部屋に戻ろか」、そう言って私の手を取って部屋を出た。握られた手の部分がどんどん熱くなっていくのを感じながら、"もしかして、この感情は、"と考えていたら、志摩君が急に振り向いて額にちゅっと軽くキスを落としてきて、何だかあれこれ考えてた自分が馬鹿らしくなった。



20110605/目を閉じてステラ
title by √A
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