私は今とてつもなく気まずい状況に在る。何故かと言えばこの目の前にいるくそ幼馴染(と言うかもう腐りすぎた縁)のローとそいつの彼女。まあ、その彼女がそいつにビンタをしてる訳だから『元彼女』なんだろうけど。
 そんな修羅場に出くわした私はただの女子高生です。そこらへんに住む普通の女子高生で、こんなくそ幼馴染とは何も関係がない。そして今日、このクリスマスとも何ら縁がない女の子です。だからそこの元彼女、頼むから私をこの幼馴染の浮気相手だとでも言うような目で見ないで。そしてそこのくそ野郎、一発ぶん殴らせろ。

「最ッ低」

 そいつの元彼女が発した言葉。ローに向けられた言葉なのか私に向けられていたのかは分からないが、その子はもう一度ローの頬にビンタをおみまいして、バチンと良い音が乾いた冬の空気に響いた。はっ、ざまあみろ。その子はローにビンタをくらわした後すぐに泣きながら走っていって、残されたのはローと私だけ。ほら、また気まずい。ローの方を見れば、楽しそうに口に弧を描いていた。ビンタくらわされて嬉しいのか。Mなのか、こいつは。知らなかった。

「本当最低だね」
「知ってる」

 素直に思ったことを言えば、予想外の返事。うっせェとかいつものように言われると思ったのに。さっき元彼女にビンタされた方の頬を自分の手で覆いながら床に落ちていた自分の鞄を拾ってこっちに向かってきたロー。

「クリスマスの日にフラれるなんて可哀想」
「今まで一度も彼氏出来てねェお前のが可哀想だ」
「ピュアと言って」
「阿呆か」

 同じ方向にある自分達の家に向かって一緒に歩く。私の横に並んで歩くローを見れば、いつの間にか背が伸びていた。私の視線に気付いたのか、ローも私の方を向いてきた。

「何だよ」
「んー、別に。ほっぺ痛そうだと思って」
「他人事のように言うなよ」
「だって他人事だし」
「元凶はお前だって言ったらどうする?」
「絶対違うからどうもしない」
「実際にそうなんだが」

 私が何で元凶なの、と聞こうとしたが気付けばその口はローのそれと重なっていた。離れた後も驚きを隠せなくて、何も言い出せないままでいる私にローはデコピンをくらわしてきた。こいつは手加減しないから嫌いだ。

「あいつになまえが好きだっつったら、あんな事になった」

 いつものニヤニヤ顔はどっかに行って、いつになく真剣な顔をしていたから、冗談ではないとは分かってる。もう長年一緒にいるからこそ分かることだけど、ローは嘘をついていない。かと言ってそんな簡単に信じられる訳がない。その場で呆けていると、ローに手を引かれてまた私達は歩き出した。



20101225/途切れる息に恋焦ぐ空
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