私は甘えることも甘えられることも慣れていない。別に私は自立した人間でも無いし、人に触れられたりするのが嫌い、とかそういうのではない。ただ、昔から甘えた事も甘えられた事が少なかった為、今、正に今甘えてくる恋人のマルコさんに対してどう反応すればいいのか私には分からない。

 一番隊隊長であるマルコさんと私は恐縮ながらお付き合いさせて貰っている。マルコさんは白ひげの皆からの信頼を得ていて、正に私の理想の人だった(ちなみに親父は皆の親父だからカウントされない、と私が勝手に決めている)そんなマルコさんと恋人になって分かったことは幾つかあるが、一番驚いたのはマルコさんが結構な甘えたな事だ。
 今やってるようにマルコさんはよく私を抱き締めに私の部屋へとやってくる。最初はそれこそ心臓が飛び出そうになった位びっくりした。けどそれも何回か続き、最近になってやっとそれはマルコさんなりの甘えたい時のサインなのだと分かった。

 そうだと分かっただけでも私にしてみたら凄い事だ。マルコさんに甘えられてる、そんな素敵な事は他に無いんだと頭の中では分かってるんだが、何せ慣れてない物だから私は何をすれば良いのかが分からない。ましてや恥ずかしがり屋の私が甘え返すなんて出来ない。
 今日もどうしようか、そう悩んでいれば、マルコさんが急に私を名前を呼んできた。返事をすればマルコさんは私の肩に埋めていた顔を上げ、どうして私が何もしてこないのか聞いてきた。マルコさんが別に私から何故何もしてこないのかと性欲的な意味で聞いてきたのでは無いことは表情で分かった。恥ずかしながらも甘える事も甘えられる事も慣れていない、そう素直に顔を俯かせながら言えばマルコさんは小さく笑った。

「何だ、そういう事かよい、」

 嫌われてんのかと思っただろい、マルコさんはもう一度私の肩に顔を埋めながらそう言った。声色からして拗ねているような悲しそうな表情をしている事が伺えた。

「嫌う訳ないじゃないですか…!」
「キスは仕方ねえかもしれねェが、抱き締めて腕も回されなかったら、そりゃ嫌われたと思うに決まってんだろい」
「、すいません、」
「…いや、」

 でも俺だって抱き締めて貰いてえと思うんだよい、そうマルコさんは言った。肩に埋められるマルコさんの頭を横目で見れば、耳まで赤くなっていて、何となく嬉しくなった。
 じゃあ、抱き締められた時どう返せば良いのか、そう聞けばマルコさんは自分の背中に腕を回すように指示してきた。言われた通りマルコさんの背中にそろりと腕を回せば、いつもよりマルコさんの体温が直に感じられて、物凄く温かかった。それに感動した私は思わず「わあ、」と声を上げてしまい、マルコさんはそんな私を可愛いと言いながら優しく笑ってくれた。ああ、甘えるのも甘えられるのももしかして凄く素敵なのかもしれない。



20100307/世界を溶かし尽くす
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