備えろ期末テストB

爆豪side

あれから菜乃の部屋での個別テスト対策会が始まっていた。

『あのさ…、この体勢じゃなきゃダメ?』

菜乃がそう言うのは、ローテーブルの前に座って問題を解いている菜乃のすぐ後ろに俺が座り込んでいるからだ。しかも座り込んでるだけじゃなく、菜乃の腰に俺が腕を回しているから余計に気になるんだろう。俺は菜乃の肩から顔を覗かせ、コイツがシャーペンを走らせるのを眺めていた。

「…罰がありゃ本気になんだろ。」
『罰…?』
「問題、間違えたらここに吸い付いてやっから。」

そう言って首筋に唇を這わした。ここには、以前俺が吸い付いた痕がある筈だ。肌と同じ色の化粧品を塗りたくって隠してるようだったが、指で強く擦ってやれば、その下から薄らと赤みが浮き出てきた。

「しっかり隠しやがって…。次はこんなもんじゃ隠せねぇくらいくっきり付けといてやらァッ…」
『待っ…!』
「一問につき一分でやれ。」
『ちょっと待った…!!!』
「あ゛?」

シャーペンを勢いよく机に叩きつける菜乃に睨むような視線を送ると、菜乃は正面を向いたまま、ゆっくり口を開いた。

『罰があるならご褒美も準備して…!』
「ハッ、褒美が欲しいなんざガキかてめェは。…テストで赤点回避出来たらなんでも聞いたるわ。」
『本当?それならお互いに筆記と演習両方ともクリアしたら二人でお出かけしようよ。』
「…」
『約束ね。』

菜乃は『さ、一分スタート!』と言いながらシャーペンを持ち直した。それから必死こいて俺が指し示した問題に取り組み始める。菜乃の指の先でカリカリと走るシャーペンを眺めながら頭の中で問題を一緒に解き、計算ミスをした瞬間にとめてやろうとした。
だが、この女は一問もミスらず問題を解き終えた。もちろん解答ページと比べても全て正解だ。「ミスらず出来ンなら最初っからやれや。」と言うと、菜乃は耳を真っ赤に染め上げて『良かった、ミスしなくて…勝己は本当に首に痕付けて来そうなんだもん…。』と消え入りそうな声を出した。

…冗談なんかで言ったつもりはねぇ。当たり前に計算ミスをすれば吸い付いてやろうとした。そもそもコレを隠してやがるからさっきだって連絡先なんか渡されてンだろ。
そう思うと、計算ミスどうこう関係なく“所有物である証”を付けたくなっちまって、ほんのりと赤みを残している部分に唇を乗せた。だが、『待って…!』と言う菜乃の言葉に俺の理性が本能的に動く体をストップさせた。恥じらいながら何を言い出すのかと、キュッと閉じられた唇が言葉を紡ぐのを待った。

『こういうのは二人だけの秘密が良いから…隠れる所にして欲しくて。』

既に赤く染まっていた菜乃の顔は、そう言い終えると更に赤味を増したように見える。
正直、コイツの言い分には納得いかねぇ。男避けの為に…誰のモンかを見せつける為に見える所に痕を付けてるってのに、二人だけの秘密だァ?お門違いも良いところだ。

だが、潤ませた目でンな事を言われりゃ、それを無下にするなんてのは出来ねぇ。…悔しいが、惚れたなんとやらってヤツだ。
己の欲と葛藤しながら、それを自分の中から吐き出すように息を吐いた。

『勝己?』と不安気に俺の名を呼ぶコイツの身体を抱え上げベッドの上に落とし組み敷いてやれば、瞼を閉じて身体を強張らせた。

まだ怖ェンだろう。この間初めてを奪った時のことを思い返すと、初めてソコに俺のが入ってくるのに戸惑ってやがった。そして、経験したことのない痛みに酷く顔を歪めていたのを同時に思い出した。強く瞼を閉じて、恐れながらもこれからされる行為を受け入れようとする菜乃を見ると、
柄にもなく目の前にいる存在が【愛しい】と思えた。

壊したかねぇ。

そう思っちまって、こんな大勢にまでしておいてダセェのは承知の上で瞼を強く閉じたままの菜乃にゆっくりと声をかけた。

「シねぇから力抜けや。」

俺がそう言うと菜乃はゆっくりと目を開け俺の視線とぶつからせた。困惑した表情を見せながら『シないの…?』と言う菜乃の目には薄らと涙が溜まるのが見える。

その表情をどう受け取りゃいンだよ…、クソッ…。
口から出かかった言葉を飲み込んで、息を一つ吐き出した。

悔しいがこの女の一挙一動に振り回されちまう程、俺はこの女に惚れ込んじまっている。

「怖ェンだろ。怖がってる女を襲う趣味はねぇわ…。」
『ごめん…。気持ち良くなるのは分かってるんだけど、入ってくる瞬間に引き裂かれそうになるのが怖くて…。』
「てめェがいいって言うまで無理矢理突っ込んだりしねェから、ンなガチガチに身体固めてンじゃねぇ。」
『あ、ありがとう…。』

俺だけが知る菜乃の声や表情をもっと自分の耳と目に焼き付けてぇ気持ちは山々だ。だが、それ以上に大切にしたいと思っちまう。

しかしまぁ…そんな綺麗事を言った所で、目の前の好きな女に触れたい欲求は抑えられねぇ。抑えられる筈がねぇ。

ホッとして完全に油断してやがる菜乃の耳に唇を寄せ、耳の輪郭に沿って舌を這わせば、菜乃の身体はピクリと反応した。

『ひぁ…!シ、シないって……』
「味見はさせろや。」
「何言って…!ちょっ…!」

耳に這わしていた舌を首筋へと降ろし、身に纏っていた服の中に手を忍ばせ身体を弄った。すべすべとした肌は触ってるだけで気持ちがいい。

『擽っ、たいよ…。』と言いながら身を捩ろうとするが、俺が身体を押さえつけている状態では上手く逃がせねぇのか、腰だけが小さく浮き始めてやがった。
服をたくし上げ、露わになった白い肌の上には、この間の行為の最中に付けた赤い痕跡が幾つも咲き乱れていた。薄くなって消えかけているその痕跡一つ一つに上書きするみてぇに再び吸い付くと、その赤い華は再び濃く返り咲いた。
一生消えなくなっちまえばいい…なんて馬鹿げた事を思いながら、腹や胸、鎖骨…と一つずつ、しっかりと痕を付けていると、頭をひんやりとした両手で包まれた。顔を上げると、菜乃は俺の頭を包んだまま口を開いた。

『そんなに付けなくても…。』
「あ?隠せるとこなら良いっつったのはてめェだろーが。」
『コスチュームに着替える時、見えるでしょ…!こんなに付けられたら誤魔化せない…!』
「安心しろや。背中は何も付けちゃいねーよ。背向けるなりすりゃ済むだろ。」
『そんな勝手な…!』

顔を真っ赤にしながら慌てる姿が可笑しく思えて、制服で隠れる身体の前側には幾つも痕を付けてやった。
時折、身体の至るところに舌を這わせば、『んっ…』と濡れた声が聞こえてくるのが堪ンねぇ…。

…まぁゆっくり俺仕様に開発してやんのも悪かねぇか。

そんな事を思いながら、俺はこの後も暫くこの“味見の時間”を堪能した。

今に、味見されるだけじゃ物足りなくさせてやらァッ…。

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