天使の魔法


時系列的には次女ちゃんが生まれる前のお話。

爆豪 side

「おおきくなったら沙耶はパパとけっこんする!」

風呂から出て髪の毛を乾かしてやった時だ。
娘の沙耶がキラキラとさせた目を俺に向けてそんな事を言った。あまりの唐突な発言に驚いちまって言葉を失った。…嬉しくないわけがねェ。ただ、そんなことを言われるなんざ思ってもなかった。
目の前にいる小さな存在が堪らなく愛しく感じちまう。俺は沙耶と目線が同じになるよう体を屈ませて、沙耶を抱き締めた。

「えへへ。ぱぱだぁいすき。」

不意をついてくるところはアイツと同じだ。…クソ、そんな所まで似やがって。
そんな悪態を心の中で吐きながらも、緩む口元は抑えらンねぇ…。沙耶が「ねぇ、ぱぱ?」と話しかけてくる。何かと思って俺の腕から解放してやると、俺の頬に可愛らしくちゅっと口づけを落として来た。俺に笑いかけてくるその表情は天使そのもので、その姿が可愛すぎると思っちまったのが小っ恥ずかしくて、乾かしてやったばかりの髪の毛をグシャグシャにしてやると楽しそうに笑いやがる。

「結婚してェほど好きなんかよ」
「うん!だってパパはせかいいちかっこいいもん!」
「…チッ…そーかよ。」
「ぱぱも沙耶のことすき?」
「…ンなもん、当たりめぇだろ、クソ…。」
「えへへ、」
「何笑っとンだ。」
「ママがね、おしえてくれたの。パパはうれしいとき、くそ、とか、ちっ、とかいうって!」
「………」

アイツ…娘に余計なこと吹き込みやがって…!


『あれ?2人ともどうしたの?』
「あ、ママ!」
「…」

なまえが脱衣所に来ると、沙耶はママの元へと駆け寄り、今度はなまえが沙耶を抱き留める。

『パパとなんのお話してたの?』
「あのね、沙耶おおきくなったらパパとけっこんするの!」
『パパはなんて答えてくれたの?』
「うーーん。沙耶のことぎゅってしてくれた!」
『よかったね〜沙耶ちゃん。大きくなったら、大好きなパパのお嫁さんになろうね。』
「うん!」
「オイテメェら…何勝手に話進めとんだゴラァア!!」
「…沙耶とけっこんいやなの?」

俺が叫ぶと沙耶は悲しそうな顔をして、なまえはじとーっとした目をして、2人して俺を見てくる。
あーークソッ。何でいつもコイツらに俺は…。

「…すりゃいンだろ!!!結婚!したるわ!!!」
「やったー!やっぱりパパだいすきー!」
『沙耶ちゃんこれでパパのお嫁さんだね?』

言わされた感が否めねぇ。
が…こんな幸せそうな顔されりゃ、悪ぃ気はしねぇもんだ…。

fin..

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