淫魔に吸血鬼を(※)


(爆豪と恋人設定)(高校生)
爆豪 side

冬休みに入る直前、クラスの連中が「お疲れ様会をしよう」と話を盛り上がらせた。いつものように共有スペースで鍋でもつつこうとかなんとか…。参加する気なんざなかったってのに、切島から誘いを受けた時に俺の隣になまえが居たのがコトの始まりだった。

『お疲れ様会?A組仲いいねぇ。』
「みょうじさんのとこのC組はそーゆーのしねぇの?」
『今の所そんな話はないよー。』
「んじゃさ!みょうじさんもどうだ?A組に話せる奴らも多いだろ?」
『んえっ!?他クラスの私が居たらお邪魔では…。』
「いいって!てかみょうじさん来てくれたら爆豪も参加するだろーし!…な!爆豪、するだろ?参加!」
「……誰がっ!」
『わぁ、じゃあお邪魔してもいい?』
「俺を無視してンじゃねぇカス共!!!」

こんなやりとりがあって、結局俺は現在、なまえと共にA組共有スペースでクラス連中と鍋をつついている。なまえは俺やデクと幼馴染だ。そして俺と恋人関係にある。なまえは授業が終わった後にA組の前まで来ることも多く、女子連中とはいつの間にか仲良くなってやがるし、誰にでも愛想良く接するからか、切島や瀬呂、上鳴とも顔馴染みになって楽しげに話してるのを見かける。自分の連れであっても、なまえが男と仲良さげにするのを良く思えないのは、この女の個性が原因でもある。

あ…?

ふと自分のすぐ隣に置いていたコップに忍び寄るように男の手が伸びてきていた。その手がコップに触れる直前に奪うように勢いよくコップを取り上げた。このコップは、今はこの席には居ねぇが、さっきまでなまえが口にしていたものだった。

「オイ……」とドスを効かせた声を出すと、そこにはアホ面と…ブドウ頭が両手を上げて立っていた。

「いやぁ…やっぱりバレる?」
「上鳴ィ…!もっと慎重に行けってオイラが言っただろー!?」
「峰田、今それ言ってる場合か…?」

掌からバチバチと火花を散らす俺を見て二人のバカ共は「ヒッ…!」と声を出して両手を更に上へと上げた。

「わ、悪かったって…!ほんの出来心ってやつ!ジョーク!冗談!」
「謝ンなら死で償えやァッ…!」
「え!?罪重くない!?爆豪落ち着け!?」

涙と鼻水の両方を垂らしながら俺に許しを乞うアホ面に対して、ブドウ頭は汗をダラダラと垂らしながら「オイラは本気だった…!」と言って開き直ったかのように俺を指差して声を張り上げた。

「ずりーよ!彼女いる癖にどうせお前ら、夢の中までイチャついてんだろー!夢精してんだろー!!オイラ達だっていい夢くらい見ようとしたっていいじゃねぇかー!」

泣きながらそんな事を言うブドウ頭に、その場にいた全員が呆気に取られた。俺は、コイツ、何言ってンだ?としか思えず、返す言葉も見当たらなかった。

この変態バカ二人がなまえのコップを取ろうとした理由は、なまえの個性にでもかかりたかったからだろう。なまえの個性…それは【淫魔】。

自分の体液を相手の体内へと取り込ませることによって、取り憑き夢の中に入り込むことができる。…入り込むだけならまだしも、夢の中に出てくるなまえは性欲以外の欲を持ってねぇ。つまり夢の中で男を襲って、現実に帰った男は夢精をしている、というワケだ。男にのみ反応する変態な個性だった。

体液を摂取されると、なまえの意思など関係なくその男の夢に行っちまう。複数人が摂取すると、摂取量の最も多かった男の夢へと入り込むようだった。

ンとに面倒な個性宿しやがってクソが…!
なまえが俺以外の野郎と話してるのを見るとイライラすんのも、気が気じゃねぇのも、全部このめんどくせぇ個性の所為だ…!

呆気に取られている俺にブドウ頭は、涙を流しながら怒り狂っていた。

「てか、オイラ達よりも、アレはいいのかよ!」

そう言って指を指した先には、轟となまえが隣同士に座ってなにやら話し込んでいた。

「良いわけあるか死ね!!」

そう叫び上げながらズカズカと轟となまえの元へと近づいた。もちろん、変態バカ二人の狙うなまえが口をつけたコップは手に持ったままだ。

『へぇ、轟くんの左手ほんとにあったかいねぇ。右は冷たいや。』
「個性の関係でそうなるみてぇだ。」

轟の掌を触るなまえ。
この女…たらしか!天然のたらしか!!

そう思いながら、コップを持ってない手でなまえの手首を掴んで立ち上がらせた。

−−−−

バタン_

俺はなまえの手を引っ掴んだまま、自分の部屋へと連れてきた。『な、なに?』驚いているなまえの眼前にコップを突き出した。首を傾げて『オレンジジュース?』と言うこの女に見せつけるようにその中身を飲み干してやるが、依然、何が何だか分かってねぇ様子だった。

「危機感ってモンはねぇンかよ…!」
『へ?』
「てめぇの飲みかけだ。」
『…!、また勝己くんの事襲いにいっちゃうじゃん…。』
「そこじゃねぇ…!…俺以外の野郎ンとこにでも行きてぇかって言っとンだ!アホ面達が狙ってたんだよ!」

睨みつけてそう言ってやれば、なまえは『それは…』と言葉を濁らせた。深く息を一つ吐き出して、空になったコップは床に置いた。
ドアを背にして立つなまえをその扉に押し付けて唇を合わせた。

他の野郎のトコになんか行かせてたまるかってんだ…。

重ねているだけの口付けで満足出来るはずもなく、閉じられた唇を割って舌をなまえの口内に侵入させた。そしてこの女の唾液をこれでもかというほどに自分の体内に取り込むように荒々しく貪って舌を絡めた。

『んっ…、ふあっ…』

俺の身体を押し返そうと、掌が俺に触れると、さっきまで共有スペースで轟の手を触っていた事を思い出しちまって、苛立ちが込み上げてきちまう。
その手を掴み、持ち上げると、合わせていた唇を離してやって中指を口に入れた。逃がさねぇように歯で軽く噛んでやって、口の中で指の先を舐めた。指先が俺の唾液でふやけちまうんじゃねぇかって程に舐め上げながらなまえのツラを見てやれば、顔を真っ赤にして指先から視線を逸らしやがった。

『なにしてるの、…っ』
「…」
『ねぇ、勝己くんってば…!』
「だぁってされとけや。」

コイツの個性は体液を摂取することが条件だ。血液を取り込む事は勿論、唾液や汗、尿なんかの体内外に分泌する液体でも発動条件を満たす。
口の中の唾液、手や身体についた微量の汗…それらを俺が大量に取り込めば、たとえアホ面がコイツの飲みかけを飲んでようが、半分野郎がコイツの手の汗を口に入れてようが、この女は今晩俺の夢の中に迷い込んでくるっつうワケだ。

…この女が男の夢の中で好き勝手される事はねぇ。
夢の中ではどんな強大な力を持っていようがコイツには敵わない。淫魔となったコイツは夢の世界をコントロールする力を持つ。だからこそ、夢に入り込まれた男がコイツを襲う事は愚か、ねじ伏せる事も無謀だ。

…現に俺でさえも夢の中にコイツに入り込まれた日にゃ、毎度シてやられる。

正直、腹立たしい。夢の中だろうが、女に好き勝手にされるなんざ納得がいかねぇ…。

だがそれ以上に嫌だった。

犯される事はなくとも嫌で仕方がねぇ…。コイツが他の男の夢の中に入り込んで、アレやコレやを施していると思うと、その男を殺してやりたいとさえ思う。

俺の唾液でベトベトになった手を離してやって、再び荒々しく唇を寄せた。

『ふ…んぅ…な、んで…!んっ…』
「全部、吸い尽くしてやらァッ…!」

そう言って首筋に吸い付いて歯を立てた。血に飢えたドラキュラにでもなったように、欲しがっちまっていた。コイツの全てを喰らいたかった。唾液も汗も、血液も…コイツの全てを俺が吸い尽くしてやりたかった。他の野郎には一滴も渡してやるかってんだ…。

『ひあっ…噛んじゃ…!んぅっ…!』

噛むのはダメだと言いたいんだろうが…そう言う割にピクリと腰を揺らしてやがる。夢の中では強気な癖に、現実のコイツはこういう刺激には弱い。

理性を飛ばさねぇようになんとか抑えながら、肌を傷つけねぇようにカプリと首筋や肩に歯を立てた。そしてそこを癒すように舌で優しく舐め上げてやる。

『はぅっ…、』

服の裾から手を忍ばせ身体を弄ると、徐々になまえの体温が上がっていくのを直接感じ取れる。
身を捩らせながら漏れる濡れた声で俺の頭はのぼせていくばかりだった。

『んっ……ぁ…んっ…』
「体温上がってンな…。」
『勝己くんの手つきが…っ、えっちなんだもん…んっ…』

そう言ったところで唇を重ねて動く唇を塞いだ。舌を割り込ませると当たり前のようになまえも舌を絡めてくる。ぢゅるっ、と音を立たせて舌を吸い上げ、コイツの唾液を取り込むと、今度は俺の唾液をコイツの口内に流し込んでやった。なまえは驚きながらもコクン_と喉を鳴らしたあと目を潤ませながら口を開いた。言葉と共に熱い吐息が俺にかかる。

『んっ…!な、に…?』

俺は口の端から漏れた唾液を舐め取り、ニヤつくのを抑えきれず口の端を上げたまま言葉を発した。

「夢ン中ではしっかりてめぇに犯されてやっから、今は俺にいいようにされろや…。」
『へ!?…そんなっ…!んんっ…!』

反抗しようとするなまえの手を扉へと押さえつけ唇を重ねて、言葉を押し込んでやった。

_俺の色に染めて、夢の中でも俺に好き勝手される事を望ませてやらァッ…。

fin..

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