同棲中:相澤消太と迎える朝


なまえ side

目を開けるとカーテンの隙間から朝日が差し込んできていた。隣を見れば無精髭を生やした黒髪の愛しい人の寝顔がある。毎朝のように目にする光景な筈なのに、今日はその顔を見ると昨晩からの行為を思い出し、ドキドキと心臓が脈を早めてしまっていた。
布団を少しだけめくって、そろりと自分の身体を確認する。
…何も着ていない。
それはおそらく目の前で心地良さそうに眠る彼も一緒だろう。

…途中から記憶がない。ひたすらお腹の奥を攻められ幾度となく昇り詰めた事は記憶にあるが、一体何度目で意識を失ったのかも、彼が満足したのかも覚えてなかった。

隣で眠る彼を起こさぬよう、ゆっくりと布団から抜けだし、ベッドの端に腰掛けた。床に散っていた下着を拾い、ショーツに脚を通した。続けてブラ紐に腕を通し背中のホックを止めていると、背後でシーツの擦れる音が聞こえる。振り返ろうとすれば、背後から腰に腕を回され、背中は人の温もりで覆われた。肩にチクチクと髭が当たるのが少し擽ったい。

「休みなのにもう起きるのか?」
『お、はよ…消太さん。』

「…はよ。」といつもよりテンポの遅い返答と喋り方に、まだ完全に起きていない様子が出ていて可愛いなと思う。そんな事言えばきっと彼は「こんな無精髭生やした男に可愛いなんて言うお前の感性は分からんな。」と呆れるだろう。

彼は私の身体にピタリとくっついて肩に顎を乗せたまま、お腹の下あたりを優しく撫でてきた。その行為にソコは、昨晩散々甘く刺激を与え続けられたのを思い出すかのようにきゅんと反応してしまう。「無茶をさせてすまなかったな。身体、キツイだろ。」と耳元でゆっくりと声を出すものだから、耳にかかる吐息に身体はピクリと反応しそうになった。それを耐えるべく身体に力を入れなんでもないフリをして返事をした。

『…っ、今度からは加減して下さいね…?』
「…」
『あの、消太さん?』
「…それはお前の反応による。」
『…私は消太さんとは違って体力がないので、前向きに検討していただけるとありがたいです。』
「そこは若さで補えよ。」
『若さって…大して歳は変わらないのですが…。とにかくプロヒーローさんの体力に一般人の私が付いて行けるはずはありませんのでご理解を。』
「…善処する。」

私が強めに言うと、消太さんは私の肩にぐりぐりと頭を押し付けてきた。こんな甘えた姿を見せてくれるは自分にだけだと思うと口元が緩むのは当然で、笑いが声に出そうになってしまうのを堪えた。
すると消太さんは「ところで、出かけるのか?」と聞いてきた。私はその質問に首を横に振って答えた。

『ううん、喉が渇いたからお水が欲しくて。』
「…あぁ。そういう事か。」

そう言って消太さんは私の顔を横に向かせて唇を合わせてきた。ちゅ、と触れるだけの口付けを交わした後、消太さんは私の背に掛け布団をかけてベッドから立ち上がった。そして適当に散らばった服をかき集めてから身に纏いベッドの端に腰掛ける私の頭に掌を乗せた。

「待ってろ。水、持ってきてやる。」
『!、い、いいですよ…!自分で…』
「昨日無茶させたからな、今日一日面倒見てやる。」
『だ、大丈夫!!そこまでしなくても、そんなに身体がツラいわけじゃないから…。』
「そうか?それなら仕切り直しでもするか?」
『へ…?』

私が顔を上げると、彼は口角を上げ意地悪く笑って言葉を続けた。

「昨日は久々で、お前のペースに合わせる余裕が無かったが、今日はお前の臨むままにしてやれそうだが?」
『…あ、やっぱり身体シンドイカナ…?お水、お願いできますか…?』

私がそう言うと、彼は優しく笑って「そうか、それは残念だ。」と言って額にキスをした後部屋を出て行ってしまった。

あれ?今、私がお願いするよう仕向けた…?きっとわたしが『仕向けました?』と聞けば、彼は「合理的虚偽だ」とでも言うのだろう。
いつも彼に翻弄されてしまう。
…でも、こうやって大事にしてくれる彼のことを、私は大好きにしかなれない。

fin..



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