【爆豪】ビタースイート


(同棲中のプロヒ爆豪くんと彼女の主ちゃん)

爆豪side

『勝己くん!おかえりー!ハッピーバレンタイン!』
「……」

リビングのドアを開けると満面の笑みで駆け寄って来る彼女であるなまえ。手にはラッピングされた四角い箱。それを受け取ると『へへ』と子どもみてぇに笑うなまえは俺と同い年とは思えない。

『ブラックチョコレートにして、お砂糖も控えめにして作ったから、そんなに甘ったるくは無いはず!』
「あぁ、…あんがとよ。」
『うん!…でもあんまり期待しないでね?』

そう言った後のなまえの表情が一瞬だけ曇ったのを俺は見逃さなかったが、すぐにまたヘラ〜っと笑ってソファに座ってテレビを見始めた。…なんだ?何か隠してやがんな。
俺もなまえの横に腰を落として、リモコンでテレビのスイッチを切る。『今わたし見てるのに』とムスッとするなまえを睨みつけると、『どうしたの?怒ってるの?』と今度は心配そうな顔をして見つめてきやがる。どうしたんだ、と聞きてぇのはコッチだわクソ。

「何か俺に隠してんだろ」
『何も隠してないよ?』
「チョコになんかあんのかよ。」
『…』

そう聞くとそれは当たりだったようで、先程と同じように眉を下げて悲しそうな表情をする。なまえがソファの上で体を丸めて小さく座り、弱々しく話を始めるのを聞いてやる。

『…だって、勝己くんは絶対、沢山チョコもらってるもん。』
「あ?」
『ヒーローダイナマイトは人気者なんだもん。わたし以外の女の子からも沢山チョコ貰ってるんだもん。わたしのチョコが、その中で1番美味しい自信ないもん。』
「…ンなことかよ。」
『ンなことって…。わたしは嫌で仕方ないのに。』

顔を上げてそう言うなまえは目を潤ませながらムスッとした表情をしてやがる。ソファの上で体を小さく折り曲げて、そんな可愛いことを言ってくるこの女をどうしてやろうか、とため息を一つ落とし、その体を俺の腕の中に閉じ込めた。

「憶測で全部決めつけて、勝手に張り合ってんじゃねぇよ…。」
『っ…。』
「テメェ以外のモブからのチョコなんざ、1つも貰ってねぇわ」
『…え』

俺の言葉でなまえは腕から抜け出して、目を丸くして俺を見つめてくる。"どういうこと?"とでも聞きたそうだ。そう聞かれる前に「…なんでもねぇわ!!」と怒鳴り散らして再び腕の中に閉じ込めた。
たしかにパトロール中には何人かの女から紙袋を差し出されたが、どれも、仕事中だとか適当な理由をつけて受け取ることはしなかった。…まぁ、事務所のやつからの「いつもありがとうございます」と言って渡された感謝の気持ちのチョコは受け取ったが。それも持ち帰ることはせず、事務所で片を付けてきた。なまえは俺がチョコを持ち帰って嫌な顔をしたり、怒ったりするような女じゃねぇが…、好きな女を少しでも不安にさせる事を俺がしたくはなかった。
そんなコッチの気も知らねェで、勝手に落ち込みやがって…。

「てか、テメェは自分が作ったもんくれぇ自信持てや。」
『だって…、お菓子作りとかあんまり得意じゃないから、他の子と比べちゃうと自信なんかないよ。』
「…へぇ?んじゃ、他の奴らに負けねぇチョコの作り方教えてやんわ」
『なにかコツがあるの?…ってどうしてわたしがあげたチョコを開けてるの?…!、んぐっ…』

なまえを腕から解放して、先程手渡された箱を丁寧に開ける。入っていたのはガトーショコラ。それを一つ取ってなまえの口の中に押し込んだ。驚きながらも一口だけ噛んで口の中に入れ、俺が指で掴んでいたガトーショコラの端は小さく欠けている。
なまえの顎を掴んで上を向かせ唇に口づけを落とす。舌で唇を割り開いてなまえの口内にあるガトーショコラを奪って唇を離した。口内に広がる甘さ控えめのそれを味わう。

『っ……!』
「これは、テメェにしか作れねぇチョコだろ?」
『…勝己くんの、変態っ!』

顔を真っ赤にしてそんなことを言ってくるなまえをソファに押し倒す。
…"不安に思っていたのが馬鹿みたいだ"と思うくれぇ、愛してやることに決めた。俺の1番好きな奴が誰かをイヤという程わからせてやらァ…。

fin..
(ハッピーバレンタイン!2021.2.14)



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