お茶菓子は武器と成る。 (3/5)

「……そんなのあったんスか」
 絶対テキトーな事云ってるな、と訝しげに糸目を細めるレオナルドだったが、ふと思い出した事があり、手を上げた。
「あのー最近気付いたんですけど……僕と◆さんが話してる時って、必ずと云っていい程クラウスさんが◆さんを呼ぶんですよね」
「そりゃ、お前が◆とよく話してるからじゃねーの」
 温めたスコーンをご満悦に頬張るニーカを眺めるザップは、いつもの如く興味無さそうである。
「やっぱそうなんですかね。気のせいだとは僕も思ってるんですけど」
「アイツも旦那に呼ばれりゃすぐ行くしな。話遮られるのが気に食わねんだろ、陰毛頭」
「そんな子供みたいな事思わないし!」
 ムキになってそう返したレオだったが、実際も“それ”で気を悪くする事は全く無かった。事務所に穏やかな時間はある事はあるが、大抵は皆忙しそうなのだ。◆も頻繁に会合を欠席してはチェインの如く走り回っているようだし、自分が思っているよりも幹部の片付けなければならない案件というのは多いのだろう。
 ただ、何かと◆は自分を気にかけてくれ、餌付けのように色々と差し入れてくれる。それもあって事務所に彼女が居れば自然と話す機会も増え、クラウスがそこへ声を掛ける事も比例するのだ――そうだ、別におかしな事は無いじゃないか、とレオはザップの言葉に納得した。
「んー……」
 しかし、そこへ釈然としないような唸りが響く。
「パトリックさん、どうかしました?」
 レオが声の主を振り返ると、◆の得物、その刀身のドクロを見つめていた。
「ん……いや、なんでもねぇ」
 そう云って、ナイフをホルスターに収める。
「――だがな、レオナルド。クラウスは“ああ”見えてすげー執着心が強いからな。気をつけろよ」
「ええッ!? なんスかそれ、怖いんですけど!?」
 思わぬ忠告を頂き、レオは思わず目を見開いてしまった。
 ザップとニーカを見れば、我関せずのそぶりであり。
 何処から入って来たのか、いつの間にか肩に乗っていたソニックに頬をグイと押されたレオは、もしかして、厄介な事に巻き込まれつつある? と、日常茶飯な身の上にため息を吐くのだった。



「――おかえり。おつかい頼んで悪かったね、荷物重かっただろう」
 ◆が事務所に戻ると、クラウスはおらず、スティーブンが立ったままマグに口をつけているところだった。
「全然平気! それより何を持って行かされたのか気になるけど」
「はは、気が向いたら教えてあげよう」
 ただいま、と応えた◆の腰には見慣れぬコルトが下がっていたが、スティーブンは彼女が“それ”を選ぶ事は分かっていた。

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