視たからには! (5/7)
「……ハッ!」
知らずBombs Awayしてしまった戦犯は、遅れて固まったのである。
「……男性……?」
そして、やはり首を傾げるは我らの最強のリーダーで。逆光とモニターの光のせいで、非常に怖ろしい顔面になっている。
(わァァァやっぱり知らないんだァァァァ)
レオはここから逃げ出したくなったが、トータス・ナイトは逃げないのであり――
「……デートだったのかね?」
半ば現実逃避(否、放棄)しかけている少年は、“デート”と云う言葉がクラウスさんの口から出るとはナー、と冷静に状況を見守ることにした。
それはザップも同じらしく(むしろ責任放棄らしい)、明後日の方向を見ながら葉巻をふかしている。
◆はと云えば、クラウスの――非常に普段通りで、それでいてとても良く響く――声に目を丸くした。
「え!? ちが! 違いま……す? あれっ、そういうことになるの……?」
デートじゃないよね? でもミスタが、などとブツブツ云いながら、首を傾げ、いやいや、と首を振る、こちらは非常に異常な慌てぶりである。
それを見た眼鏡のレンズは相変わらず反射して、緑の瞳は見えないものの、レオにはフイ、と視線を◆から外したように見えた。
「……すまない。少々立ち入り過ぎたようだ、◆。君のプライベートは君のものだ」
「ちちちち違います! そうじゃないんですッ!!!」
「◆……?」
強く首を振り、声を張り上げた彼女の勢いに、クラウスも驚いたようで、少し引いた体勢のおかげで逆光は消え、表情が分かるようになった。今度はクラウスが目を丸くする番だった。
しかし、◆はここから何を云っていいのか分からず、アウアウと泣きそうに目を潤ませながら、後ろの“彼”に助けを求めた。
「ブンブンンンっ……」
「……あー……分かった。分かったよ、お嬢」
スマンスマン、と云いながら額に手を当てて、スティーブンは溜め息を吐いた。
「勘違いだ、クラウス。お嬢といたのは情報提供者、つまり取引相手だよ」
「ふむ……?」
勘違い・情報提供者・取引相手。
そのワードが羅列されようと、クラウスに納得した様子はない。
それを分かりきっているように、スティーブンは続ける。
「これから行う作戦会議には詳細なデータが必要でね。それを彼が持っているとの情報を、ついこの間掴んだんだ。で、商談のランチが今日だったわけさ」
「何故、◆が? 交渉が上手い構成員は君も。他にも適役が居たのではないかね」
そう、ツェッドも同じような事を云っていた。彼女でなければいけない理由があるのか、とも。
「お嬢は取引相手と面識があったのさ、クラウス」
僕と以前行った社交パーティーだっけ? と、◆の隣に歩み寄る。
「そこで彼女を気に入ったらしくてね。まあ、白状してしまうと、先方からのご指名だったんだ。断るわけにもいかないだろう?」
「それゆえに◆をダシに使ったというのかね」
軽く肩をすくめるスティーブンに、一歩も引かないクラウスの表情は険しい。そう云われちゃうとなーと、さすがの副官も後頭部を掻くしかなかった。
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