おにぎりがないとね (4/7)

「暴動教ってあの、暴れることで神に近付けるとか云うアグレッシブな宗教団体っすね」
「一年前でも、数ヶ月に一度はデモ起こしてたしねぇ」
 厄介な相手じゃないからほぼザップが暴れ返して終わりじゃないかなぁ、などと◆が云っているうちに、対象地点に近付く。
「あ! ザップさん居ました!」
 先行してランブレッタを飛ばして行ってしまったザップの背中をようやく見つけ、レオナルドは目を見開く。
「レオ、教徒の戦闘力は大したことないと思うけど、調達してる武器によってはシャレにならないから、なるべく私のそばを離れないでね」
「は、はいっ!」
 デモが起きている通りに入ると、ザップはすぐに意気揚々と焔丸を振り回して行ってしまった。まるで待ちにまったプール解禁にはしゃぐ小学生のようで、バイクを止めて遠巻きにそれを眺めていた二人だったが、不意に◆が声を上げた。
「――レオ! 肩借りる!!」
「えっ、うわあッ!?」
 声と同時に、◆はレオのヘルメット頭を馬跳びよろしく飛び越え、空中で腰のホルスターのロックを外し、いつの間にすぐそこに迫っていた教徒と武器を交えた。
 黒い大きなナイフを逆手に持ち、その刃を相手に光らせつつ、後ろを振り向く。
「レオ!」
「はいいっ!!」
 そうだ、そばを離れちゃダメなんだ! と慌てて◆を追いかけると、通りの奥からザップが叫んだ。
「とばっちりは自己責任だぜ、陰毛頭!」
「分かってますよッ!」
 自由自在に刀身を変えたり糸を出したりするザップとは違い、どんどん相手の懐に攻めていく◆のそばを離れないというのは至難の業である。
「僕も出来ることやります!」
 とは云え、年の近いであろう女性に、ビクビクついて行くだけも情けない。よって、レオナルドも眼球がオーバーヒートしない程度に能力を使っていく。
「いいぞー少年!」
 神の守護ォ! などと喚く教徒たちを斬り伏せながら、◆はにっこりと笑った。
 眼以外ごく普通の少年であり、戦闘能力を持たないレオナルドは、それでも“こんな状況”に慣れつつあった。つまり、暴れるだけの教徒の眼を支配しつつ、その合間に◆の戦いぶりをなんとなく観察することも出来たりした。
 彼女は双剣使いで、かのモンスターの討伐や捕獲をするゲームを思い出す。
 両の刃物で大きな風切り音を立てるのも、軽やかに身を翻して相手を斬り伏せるのも、まさにゲーム内のキャラクターのようだが、違うのは逆手持ちなところか。さながら“ニンジャ”みたいだな、何だっけアレ……クナイ? と、レオはアニメで観た金髪の“シノビ”を思い浮かべた。

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