おにぎりがないとね (3/7)

「スターフェイズさんからだぜ、こりゃ出動確定!」
 着信画面を見たザップは、音が聞こえそうなほどに口角をつり上げ、もはや耐えきれないのか立ち上がった。
「うぃーす」
「――ザップ、そこにお嬢は居るな?」
「そっすね、◆とレオと」
 こちらを見つつ、胸元から葉巻を出して咥える。
「よし、お前たち三名で旧キャナル・ストリートへ向かってくれ。予想通りだが、触発されて騒ぎが起こり始めたと、見回りのチェインから連絡がきた。こっちではクラウスが暴れてるが、数だけは多い輩相手にもうしばらく掛かりそうだからな」
 電話口の向こうでは、ドカーンだのバリバリッだの、「111式……!」だの、はたまた「アヴィオンデルセロ……!」などと騒がしく。それはソファに座っているレオと◆にも聞こえていた。
「ウッシャー! 憂さ晴らしだぜ!!」
 謹慎のお仕置きを受けていたことも忘れ、そう叫ぶザップに、レオたちは顔を見合わせ苦笑する。
「……頼むぞ、詳しい地点や対象の目的やらはメールで送る」
 へーい、と答え通話を切ると、すぐにでも血法が出そうな勢いで愛用のジッポを握って見せた。
「行くぜ、お前ら!」
「めっちゃ機嫌良くなってますねー」
「ふふ、チンピラだからね」
 ◆は耳打ちするとクスクス笑う。
 そういえば、“こういう”人ってライブラには居ないタイプだ、とレオはその眼を少し見開く。自分がチェインと三歳しか変わらないとはいえ、あの人狼のお姉さんと学生のように絡んだりすることはほぼ無い、と云うか皆無だし――ゆーても、職場だし、なあ。
 だから、やはり彼女は不思議な感じがするのだ。
「おい、童貞陰毛に赤リボン! お前らはタンデムだかんな!」
「ええ? そんな呼び方初めてされたよ」
 先に事務所を出ていってしまったザップに肩をすくめつつ、◆によろしくね、と背を叩かれたレオナルドは、やはり少しだけドキッとしてしまう童貞様である。
「――あ、ミスタからメールきたよ。暴動神聖教団によるデモが起きてるんだって」
 ◆はあまりバイクに乗ることに慣れておらず、レオの腰にしっかり腕を回していた。しかし通知が届いたのなら確認せねばと、片手にスマートフォンを持ち、メールを読み上げた。

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