おにぎりがないとね (2/7)

「――ね、レオ。お腹空いてない? ライスボール持ってきたの」
 ◆が袋をガサガサ云わせ、アルミホイルの包みを幾つか取り出すと、その“掛け合い”がピタリと止む。
「わっ、いいんですか? 食べます食べますッ!!」
 ジャパニーズソウルフードだ! と、レオナルドは目を輝かせたが、よほどのものでない限り、貰えるものはなんでも食べそうな反応である。
「陰毛ボッチャン、良かったでちゅねえ、ママのおにぎりですヨー」
 茶化しにも構わず、◆から受け取ったアボカド&チーズボールの包みを、さっそく剥いて食らいつくレオに、ついにザップも体を起こした。
「俺にはねーのかよー」
「“ボク”は訊かなくても食べちゃうじゃない」
「さすがママ、分かってんな」
 無遠慮に紙袋に手を突っ込み、ザップが適当に掴みだしたライスボールの具は、さすが野生の勘の持ち主――一番ハイカロリーな“デビルライスボール”だった。
「ザップさんが“ママ”って云うと別の意味に聞こえますね」
 少し大きめのおにぎりを嬉しそうに食べながら、しっかりとツッコむレオナルドは、何となく気になっていたことを口にした。
「そういえば、◆さんてお幾つなんですか?」
 尋ねてから、アッと声を上げる。
「すすすっスイマセン! 女性に年齢訊くのはマナー違反っすよね!」
 クラウスさんは絶対こんなヘマをしないだろう、と焦るも、◆はそんなレオの様子が可笑しかったのか、再び包みを取りつつ軽く吹き出した。
「そんなの気にしなくていいって。んー……歳はチェインと同じくらい、かな? 多分」
「……“Maybe”……?」
「うん。レオよりは“多分”上」
 ニコ、と笑って、ツナマヨボールを勧めてくれる。
「美味しい?」
「あ……はい、めちゃくちゃウマいです」
 ちゃんと日系スーパーで買ったお米と具材だからね! と。一体何合分作ったのかと不安になるくらいに、次から次へと袋から出てくるホイルの包みを眺めつつ。
 ――女性に、と云うより、◆さんに訊いてはいけないことだったのかな。
 ザップをちらりと見ても、頼りになるのか疑問な先輩は、おにぎりに夢中でよく分からない(既にそれ何個目だ!?)。
 ◆の見た目の印象としては、自分やチェインなどと変わらないだろうが――でも待てよ、これでスティーブンさんと同い年って云われても、不思議じゃない気もするぞ……いわゆる年齢不詳……!
「……ウマ」
 混乱してきたから考えるのはやめよう。
 レオナルドはおにぎりを食べるのに集中することにした。



 ――RRRR。
 男子二人が白米様に満足しきった頃。
 お猿のスマートフォンが「喜々ッ」と声を上げた。

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