また一興 (6/7)

「んぐぐ……!」
 レオの頭上ではそんな和やかなことが行われていたが、こちらは息苦しい。しかし、女性にサンドイッチされているのは――まあ、悪い気はしない。
 そして、ぎゅうぎゅうとチェインに負けず劣らずの柔らかいモノを押し付けてくる◆は、いつもより陽気であり。
(……って云うか)
「……◆さん、酔ってますね?」
「えっ、そう見える? そんなに飲んでないんだけどなあ」
 この人、酔いも顔に出ないのかと、揺さぶられていると。
「◆」
 それは鶴の一声なのか。
「はい、クラウスさん」
 酔っていようがなんだろうが、その声に呼ばれれば、決まって凛とした返事をする。
「レオが苦しそうだ」
「あ、やだ! ごめんごめんっ」
 チェインとレオからパッと手を放した◆は、ウフフ〜と怪しく笑いながら、レオのハネた髪を撫でてくる。
 これは確実に酔ってるな!? と、髪を弄られるがままになっていれば。
「◆」
 また鶴が鳴く。
「はい、クラウスさん」
 その返事もまた凛としてはいたが、立ち上がるその動作も、ゆっくりと自分の元の席へ戻っていく足取りも、少々危ういものがあった。
「お嬢、結構飲んだみたいだな」
「だからあ、そんな飲んでないんだってば〜」
「語尾伸びてるぞ?」
 自分の後ろを通っていく彼女に注意しながら、スティーブンは可笑しそうに笑う。
 クラウスの左隣へ辿り着いた◆は、堀に足を入れず、その場にペタリと座った。
「…………」
 黙ったまま、ぼーっとクラウスを見上げる◆。
 それに気付き、クラウスはグラスを置いた。
「……」
 そして少し後ろに下がり、テーブルとの間に距離を置く。そして左手を軽く上げた。
「エヘヘ」
 すすと、招かれるように◆はその膝へと腰掛ける。
「――!」
 息を飲んだのはレオである。
 そして、◆の白く細い腕がクラウスの太い首に回されたのなら、
「ッ!!?」
 自分が抱きつかれた以上に動揺し赤面してしまうのは、この少年には無理もないことだった。
「うー……ふふ……」
 クラウスの向かいに居るレオからは、◆に背を向けられている状態なので、表情は分からない。が、気持ち良さそうに微笑んでいるだろうことは分かる。

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