また一興 (5/7)

 クラウスとスティーブンは仕事の話を(かなり物騒な単語が飛び交っている!)していたし、ザップはLサイズのピザを一枚平らげ、追加を注文していたし、チェインは幹事だからと気を張る様子もなく、ぐいぐいウイスキーを飲んでいる。ギルベルトはその様子を穏やかに見守るだけだ。
 ちなみにメインメンバーであるK.Kは家族との先約があったらしく、今日は見送るとのことだった。その代わりにと、◆が先程空けた白いラベルのボトルは彼女が差し入れた超高級ワインである。
「レオ〜、はいどうぞ〜」
 焼きたてのピザに夢中でがっつくザップを押しのけ、レオの隣に入ってきた◆は、何本目かのボトルをぐいと差し出してきた。
「あ、ありがとうございます」
「ちゃんと食べてる? ザップを見習って沢山食べなよ〜?」
 レオは幹事の自覚を捨てずにジュースで通していたが、上司(だと思う)の酒を断ることは出来ないのだ。
 グラスに注がれる、上品だが少し野蛮さも見え隠れするフルーティな香り。
 貰った酒に口をつけながら、◆を見れば、その笑顔に疲労の色はなく。
(……でも、“不調が顔に出にくい”ってクラウスさん云ってたっけ)
「◆さん、タクシーでここに来られてましたけど、それまでは寝てたんすか?」
「ううん? まあ、いつもより遅くには起きたけど、そこからゆっくり支度して、買い物がてら散歩してたの。一年前のHLとは随分変わってる場所もあるし、頭の中の地図を更新しなきゃと思って」
 あ、これは本当にもう疲れてないのかも、とレオは思いつつ、へえと頷く。
「凄いっすね、僕だったら三日間寝てます」
「ほんとに!? そんな寝れないなあ、私」
 アハハ、と笑う◆は、次はとザップに酒を勧める。
「ピザにワインなんか合わねえっつの」
 ビール派である彼は、とか何とか云いつつもグラスを持つ。
「あー、この店、お前のために選んだみてェだぞ」
 堀ごたつ×白ワインと云う、不思議な組み合わせを、ザップが何故か説明し出す。
 この人、ホントにクズだけど、なんだかんだ優しいよな――とレオは、肩をすくめた。
「そうなの?」
「ん、陰毛頭がお前が酔っ払ったところを襲うっつって」
「そおおんなこと云うワケないでしょう!!? ああもう、この人を少しでも見直した僕がバカだったァッ!」
 嘘八百を並べるお猿には、彼がピザから避けていたパセリを投げておき、きょとんとしている◆には訂正を入れる。
「えっと……チェインさんが、◆さんの好みに合わせようって調べて下さって。僕はそのリストから選んで予約とかしただけなんで」
 ですよねチェインさん! と後ろを振り向けば、
「まーね」
 と、軽く頷く。
「わあ、二人ともっ! ありがと!!!」
 ◆はボトルを置いて、レオとチェインをまとめて抱きしめた。
「どわ……ッ!?」
 ワインの香りと、女性特有のいいニオイと柔らかさ――妹以外でそういう耐性が出来ていないレオは一瞬にして赤面する。
「お部屋もステキだし、ご飯もワインに合うのばっかりだし!」
「全く……◆ったら“外”で自由に行動出来るって云うのに、任務ばっかだったんでしょう? まあ、“中”で息抜きなんてのも皮肉かもしれないけどねー」
 素っ気なく云うも、チェインはレオを挟んだまま◆の頭を撫でる。

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