お祝い (2/3)

「なるほど……」
 レオもジュースを飲み干し、空になったグラスをローテーブルに置く。
「何、◆が気になるの?」
「うえええッ! そ、そう云うんじゃないです!」
 いかにも純情(某猿に云わせれば童貞)らしく顔を赤くして慌てるレオに、チェインは可笑しそうに眉を上げた。
「き、気になるって云うか……ちょっと独特の雰囲気を持ってる人だなあと。ライブラの皆さんは大概そうですけど、でも◆さんは――」
「あらあ、レオっち! ダメよ!」
 突然、後ろからグローブをはめた綺麗な手が伸びてきて、ギュウと抱きつかれたレオは、ぐええ!? と潰れたカエルのような声を出した。
「姐さん、ホールドきまってますよ」
「◆っちは、クラっちのだから! 好きになっても勝目ないわよん」
「ぢ、ぢがいばず……っでゆーが、はなじでぐだざ……!」
 落ちかけながら訴えれば、長身美女のガンスリンガー・K.Kがパッと手を放し、上機嫌に隣に座った。さすが酒の席は入れ替わりが激しい。
 回収されたはずのザップは云うと、ホールの隅でツブれていた。速攻でK.Kにやられたのだろう。
「最初に忠告しておくけど、◆っちはダーメ」
「……い、いや、違いますって。別にそーゆーのじゃなくて、その、ついこの間初めて会ったばかりで知らないこともたくさんありますし……それに不思議な人だと思って」
 首を擦って弁解するレオに、K.Kは頷いてビンに口をつける。
「あまりここでは見ないジャパニーズだしねえ。素直なんだけど何故だか捉えどころが無いのも魅力よね」
 だから魅力とかの話じゃねっす、とレオは云いたかったが、ふと気になって首を傾げた。
「あの、◆さんがクラウスさんの、ってどう云う……? お二人はその……つ、付き合ってらっしゃるんですか……?」
「んー? ンフフフフ〜、それはキミの歳にはちょっと早いお話じゃないかしら〜」
「……酔っ払いの反応って面倒臭いっすよね、チェインさん」
「失礼ね、レオっち! そんなに飲んでないって!」
 今度は思いきり背中を叩かれ、ゴヘエッと咳き込む。
「――ま、これから一緒に行動していればなんとなく解ってくるわよ、二人のことは。……それに、詳しくは私たちからじゃ話せないわ」
 先ほどとは打って変わり、声を落としたK.Kの目はレオの方からは眼帯で見えなかった。しかし、その横顔は奥の席で話している◆たちを見ているのだろう。
「ともあれ無事に戻ってきてくれて良かった」
 大人っぽいルージュが優しく笑みを浮かべたので、レオはもう何も訊けなくなってしまった。
 気になることは色々あるものの、他のメンバーに対しても知らないことばかりだし、K.Kが云うようにこれから関わる内に知っていくこともあるだろう。
「おかわり貰ってきますね」
 そう云って立ち上がったレオの義眼に一瞬◆が映る。
 クラウスと似た色のオーラを纏う彼女。捉えどころが無い、とK.Kが云ったが、それが気になる理由の一つなのかもしれないと、なんとなく思うのだった。



「◆、これは食べたかね」
「あ、美味しそう。いただきます」
 レオたちの間でそんな会話がされていたとも知らず、新構成員との顔合わせを終えた◆は、クラウスの隣に座して食事を進めていた。
「うむ、よく食べるのは変わっていないようだ」
 良かった、と目を細めたクラウスは、◆の前に様々な料理の乗った皿をどんどん置いていく。
 向かいの一人がけソファからその様子を眺めていたスティーブンは、まるで妹を甲斐甲斐しく世話する兄か? と一人笑いを堪えていた。
「でもこんなちゃんとした食事は久しぶりですね。一人の時は適当に済ませていたし、あれば食べるけど無ければ食べなくても割と平気だしで」
「なるほど、やはりそうだったか」
 カルパッチョを口に運びながら、◆は顔を上げる。

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