小説 | ナノ


▽ 4





「…………兄貴はさぁ…今までのって、作ってたわけ?」

身体の大きい男二人でも余るくらいの大きな浴槽。
後ろから抱きかかえるようにしている蓮に凭れかかりながら、響は気だるげな様子で尋ねる。
身体を洗われて中に放たれた精液をかき出されたりとこの体勢になるまでに一悶着あったものだから、事後の倦怠感も相俟ってぐったりだ。
背後から首筋に唇を落とす蓮に抵抗する気力も起きず、好きにして、の状態だ。

「…まァ、昔にヤンチャしてた頃もあったけどなァ。お前と会った時には既に卒業してたし、今じゃぁ仕事もあるから今まで通りの方が常だぞ」

「…でも、まだ元に戻ってねぇし。…やっぱそっちが素?」

「素っつーか、癖?…理性が飛ぶとこっちになっちまうンだよなァ。…何、響はいつもの方が好みか?」

「…………………別に、どっちでも兄貴は兄貴だし」

たっぷりの間の後、恥ずかしげに目元を染めて視線を逸らす響を後方から見ていた蓮の表情が緩む。

「かァいいなァ、響は」

「ちょ、何勃たせて…ッ」

「響が可愛いから仕方ねェダロ。………それにしても、ヤられそうになる響を見た時はマジでブチ切れたワ。女は仕方ねェって思って今まで黙って見てたケドなァ。流石に男は許せねェし」

ちゅ、ちゅ、と響の項に唇を落としながら、蓮の悪戯な手は響の胸を弄る。
戯れながら告げる言葉は穏やかなものではないけれど。

「ッ…バカ兄貴…も、無理だって……なァ…その、いつから…?…んっ…」

「いつからお前が好きかって?…そりゃァ、初めて会った時から」

「えっ…会ったのって、小学生…ぁっ……」

「将来、好みに育つだろうなーって思ってたくらいだけどサ。……なァ、俺の恋人になってくれンだろ?」

悪戯する手をやめずに、項から顔を上げると耳朶を甘噛みしながら響へと告げる。
ゾクゾクするような低音が耳の奥を擽って、静まったはずの熱が再び身体を巡り始めるのを感じていた。
今まで恋愛感情として蓮を見てきたわけではないけれど、こうして抱かれても嫌悪感は全く沸かない。
むしろ、自分に欲情してくれるという事実を嬉しいとさえ感じてしまっている。
恋愛感情で好きだとはまだはっきり言えないけれど、これから先、そうなる事を頭のどこかで予感していた。

こくりと頷いた響の耳の裏に吸い付いて紅い所有印を散らすと、蓮は悪戯する手をより性的なものへと変化させる。

「ぁっ…ぁっ…アニ、…んぅっ」

「今日からは兄貴じゃなくて、蓮て呼べよ。……響。愛してる」

手管に翻弄されながら聞いた愛の告白は響の胸の中にじんわりと広がる。
それに対して下半身が反応してしまったのだから、恋愛感情を持って蓮に好きだと告げる日はそう遠くは無いのだろう。








*登場人物
佐倉響(ヒビキ) 17歳
佐倉蓮(レン)  25歳


prev / next

[ back to top ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -