「機嫌」バダエス



考えながら廊下を歩いていたら
いつの間にか医務室についていた

中に入ると先ほどまで話題に出てた男が椅子に座っていた
ビックリしたがすぐに落ち着いて問うた


「バダップどうしたんだ?こんな所で」
「少々手を痛めてな。君こそどうしたんだ」


バダップは立ち上がって俺に近づき
ついさっきミストレに殴られた俺の頬をさわった


「うおっ」


急にさわられたからビックリして変な声が出てしまった
自分でも驚くぐらい声が裏返った


「…?どうしたエスカバ」
「い、いや…なんでもねぇ…」
「そうか」


しかも顔が近い。
なぜかバダップを見るのが恥ずかしくて目を逸らしてしまう


「頬が少し腫れてているな」
「あぁコレか。ミストレに殴られたんだ」
「いつも乱暴だな、ミストレは」
「困ったモンだぜ…あいつ」
「それより、君は何故殴られたんだ?」


バダップは首をかしげて俺に問う

さっきまでバダップについて話してたらミストレがキレた
だなんて言っていいのだろうか
言ったら今度こそミストレに殺される気がするんだが


「まーいろいろあってな」
「いろいろとは」
「んーと・・・」

「言えない事なのか」
「あ、いや・・・そうじゃねぇんだけどな・・・」


まぁミストレはここにいないし言っても問題はないか・・・
そう思い 先ほどあった事を話した


「なんかさ、俺とお前が仲良く話してるのが気にくわないらしいぜ」
「仲良く?」
「あぁ。俺と話してるときはバダップが妙に機嫌がいいってさ。よくわかんねーけど」
「・・・そうか」


そう言うと何か心当たりがあるかのように
バダップは腕を組んで考え込み始めた



「どうした?バダップ?」
「自分の機嫌がいいのかどうかは分からないが・・・」
「ん?」


「君と話してると何故か胸が熱くなる。」
「・・・え?」
「それと最近は、よく君に会いたいと思うようになった」


・・・え?今バダップなんていった?
胸が熱くなるって・・・?
そう混乱しながら考えているとバダップから予想もしなかった言葉が発せられた



「俺は君が好きなのだろうな」


しばらくの沈黙があった
自分の思考が追いつかず、さらに混乱してしまった
やっと少し落ち着いて考えたら急に恥ずかしくなり
俺はとっさに真っ赤になる顔を手で隠していた


「・・・・・・・・・は!?そ、それって友情とかで・・・だよな??」
「友情・・・とは違うかもしれない。」


じゃあ・・・好きってどういう事なんだ
バダップは心配そうな表情で俺に言った


「大丈夫かエスカバ、顔がさらに赤くなっているが」
「お・・・お前のせいだろ!!」
「・・・すまない。何かしてしまっただろうか」
「えっ・・・いや・・・」


バダップは俺に言ったことを理解してないなのだろうか
俺はバダップに問うた


「バダップ・・・好きって・・・」
「・・・こういう感情の事を『恋』と言うのだろうか」
「おっ・・・おまっ・・・」


そんな事言われたら俺はどうすればいいんだ
バダップはおふざけをするような奴じゃない事ぐらい分かっている
だからこそさらに顔が熱くなり、赤くなるのを感じた


「君は俺の事が嫌いか?」


そうバダップは俺に言った
本当は 俺も好き と言いたい
ここ最近ずっとバダップの事を考えてしまっているから
本人にしっかりと、俺も好きと言いたい


けれど俺自身がそれを拒んでしまう
何故だかわからないけど言葉がでない

二人共押し黙ってしまった
しばらくの沈黙が出来た後にバダップは言った


「…すまない。困らせてしまったようだ。今のは忘れてくれ」


そう言ってバダップは医務室から出ようとした


駄目だ駄目だ 今ここでしっかりと言わないと絶対後悔する
返事をしないと俺自身、後悔しか残らないだろうと思うと
焦りと悲しみが湧き上がってくる


ここで勇気をだして言えば、この先どうなるかわからない
だけど言った方がいいと思った
正直に心の内をさらけ出したかった


バダップが医務室のドアを開けようとした時に
勇気を振り絞って呼び止めた


「バダップ…!!」


バダップは驚いたようにこちらを振り向き
「どうした」と俺に問うた


呼び止めておいたからには言うしかない
恥ずかしさで死んでしまいそうになるのを我慢して
俺は言った


「おっ…俺も、バダップの事……っ」


…でもこの先の言葉がどうしても出なかった
言わないといけない と思っても声に出せなかった


俺はあまりに恥ずかしくて顔を伏せてしまった
もう無理だ…と思った矢先、
バダップが医務室のドアから離れ、俺の方に近づいてきた


「…エスカバ」


顔をあげると目の前にバダップがいた
よく見るとバダップの頬が少し赤くなっていた
そして少し恥ずかしそうに俺に問う


「それは…好きと受けとっていいのだろうか」


バダップの顔が赤くなっていくのが見て取れた
俺はバダップのその言葉に頷いて返事をしてバダップに抱きついた


「……好き」


やっと言えた。しっかり伝えられたはずだ。


バダップは満足そうに微笑んで
俺の背中に腕を回し、抱きしめてくれた





 

―――――――――――――


エスカがただの女子にしか思えない件









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