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15.拒絶するもの


 7th STAGEのゴール、セオはついにフィラデルフィアに到着した。8th STAGEはそのままスタートするが、セオはディエゴとの約束通り、フィラデルフィア独立宣言庁舎に向かう。着順を見ると、ディエゴは1時間ちょっと前にゴールしていたことが分かった。既に何か行動を起こしているかもしれない。
 地図を頼りに庁舎前にやってきたが、彼の姿は無かった。広場には、わいわいと遊んでいる子供や、絵を描いている老人の姿があるばかり。

「置手紙もないよね……どうしようラーム。」
「ぶるるっ。」
「そうだね、待とうか。……あれ?」

 ラームの背から降りようとした矢先、視界の端に緑色の生き物が見えた。ディエゴの恐竜だ。体調30cmくらいのそれは、ドドドドと音を立てながら走り寄ってくる。そしてすぐそばでセオに飛びつき、彼女の服を咬んで引っ張った。

「えっ、どうしたの。なに?ディエゴさん??」
「クアアア!」

 恐竜は驚くセオから離れて、また走り去ろうとした。それはちょっと離れたところで振り返り、ひと吠えする。ついて来いと言っているように思える。ディエゴの所に呼び寄せてくれているのか。セオはラームを恐竜の走る方向へ向かせ、鞭を入れた。
 恐竜は街の人通りが少ない道を走る。ひょいとひとつ路地に入る道に曲がったので、セオもそこで曲がった。
 そして、目を見開く。
 目当てだったディエゴが血まみれで倒れている、さらに、そこで何かがあったとでも言うように、地面が血まみれになっている。

「ディエゴさん!!」
「セオッッ!よく来た!捕まえろッ!後ろだ!!」
「!?」

 ディエゴがセオの後ろを指差して叫ぶ。セオは振り向いた。すぐ後ろにある建物のドアの後ろに、なんと、ヴァレンタイン大統領がいた。彼はドアにもたれかかり、こちらを見ている。その手には乾いた眼球のようなものが握られていた。

「眼球を奪うんだッッ!」

 その指示ですぐに分かった、あの眼球は『遺体』だ。セオはフック・アンド・セイブを発動させる。彼女の指先から飛び出した白い糸は、大統領がそれに気づいて眼球を隠す前に、それを捕らえた。眼球はいとも簡単に大統領の手をすり抜け、セオの元へ飛んだ。セオはそれをキャッチする。ディエゴがよくやったと声をあげた。

 しかしその次の瞬間、セオの脳におぞましい風景が浮かんだ。曇天、長い坂道の下で、自分がうずくまっている。道の両脇にはゾンビのような汚らしい人間が並んでいて、目だけがギラギラと光ってセオに罵声をかけている。一気に心が押し潰されたような気分になった。次に両手と両足がいたんだ、手の平と足の甲に、杭を打ち付けられたような穴が空いていて、そこから血が流れている。

「いやあぁぁぁぁあああアアアアアアア!!!!」

 セオが叫ぶのと同時に、視界が元に戻った。手足の穴は無くなっていて、右手にはしっかりと眼球が収まっていた。

「どうしたッ!?」
「……何かを見たな!!」

 大統領が眼球を奪い返そうと走った、セオは逃げようとする、しかし突然遺体が熱を放った。100度以上あるように感じる、セオは反射で手を離してしまった。地面に落ちた眼球は光を放ち、セオの右腕をその光で包む。右腕の甲が熱く焼ける、何が起きたのかセオにも分からない。熱さに耐えられず地に伏せると、服のそでが破れ、その右腕に何かが刻まれているのが目に入った。

「『pessimum』……?」
「セオ!遺体を――」
「何だ……それは……?」

 くっきりとセオの腕に、『pessimum』という言葉が刻まれた。大統領は眼球を拾い上げ、セオの右腕を無理やり持ち上げてそこに書かれた文字を見た。

「『pessimum』とは……ラテン語だ。『最悪のもの』……なんだ?この女がどう関係している?遺体はこれでそろった。『最悪のもの』……お前は何なんだ?」

 大統領がセオの首を絞める。セオは抵抗するが、大統領の力の強さにかなわない。ディエゴは眼球とセオを取り戻そうとするも、彼女が到着する前までのダメージがあってまだ動けない。セオは気を失い、だらりと四肢を垂らした。大統領はこの女と遺体の関係を放っておけないと思い、セオを抱き上げると急いでこの場を去った。






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