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A.M8:00 グロズニィグラード

 少佐クラス以上の者が、兵器廠東棟の通信室前にたかる。朝礼後にヴォルギン大佐から召集をかけられたのだ。なんでも、新しい通信局グロズニィグラード支部副部長を紹介したいらしい。

 通信室のドアが開き、中からヴォルギン大佐とセオ中佐が出てきた。セオ中佐は通信局グロズニィグラード支部長で、かなり目つきの悪い、ヴォルギン大佐に引けを取らないほどの般若顔をした男だ。この2人が並ぶと、かなり、恐い。そして彼らに続いて出てくるのは、どんなツラをした男かと思えば普通の女だった。何の凄味もない、普通の、ただちょっと可愛い部類に入る女だった。

「紹介する。」

 セオの低い声。

「本日より通信局グロズニィグラード支部副部長に就任する――前に出ろ。」

 彼が女の背を押すと、一歩後ろに引いていた女はぐいと前に倒れこむように踏み出した。前のめりになって体勢を崩したがすぐに取り戻し、ぴっと背を伸ばす。

「セオ・アルマーズ少佐です。暗号解読班に入ります、よろしくおねがいします。」

 筋の通った声だった。
 聞けば以前はモスクワ勤務だったが、ここの前任の副部長の病死によってこっちに飛ばされてきたらしい。これは栄転なのだろうか、あるいは・・・。自己紹介で分かったのは、少佐であること、現在23歳という若さであることくらいで、性格云々は短い自己紹介からはつかめなかった。それでも通信局配属となれば、ここにいるほとんどは本部と連絡を取る際に話す事も多くなるだろう。
 地位と役職のある女なんて気にくわない、という顔をしている奴も中にはいるようだが、大体の奴は、この男所帯に女が増えることに嫌な顔などしなかった。




 セオ・アルマーズの一日は至ってシンプルだった。朝、定時に全体朝礼に参加した後、通信室に入って朝礼。その後は暗号解読作業や各地から入った情報の整理・指示出し・記録などを行う。食事はさっそく出来た女友達やセオ中佐、通信局の部下たちと取る。終業時間はあっても通信はいつでも入って来るため、無いに等しく、実際は交代制で夜中も働くことが多い。
 夕方で仕事を終えた日は、気分転換に外をぐるりと回ってから自分の部屋にこもるらしい。






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