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Blooming Feeling ... 10


 ディエゴに追いつくことができずに3rd STAGEを終えた。ディエゴはセオよりもずっと前にゴールを通過していて、しかも今もなお行方は知れない。あの辺りを走ったらしいあの街に居たのを見たと噂を何度も聞いて、その方角を目指しても、さっぱり出会うことはなかった。

 途方もない孤独感に独り包まれ、気が遠くなり死にそうな錯覚さえする。
 雨が降ってきた、風も強くなり、空はどんどん荒れていく。それにつられてセオの心中もどんどん暗くなっていった。惨めだ、とても惨めだ。わかっていたことなのに。ディエゴに会いたくて、ずっと探していて、また一緒にいたいと思っていて、でもそれは結局セオの方だけだったのだ。思い合っていた頃なんてもうどこか遠くに行ってしまった。今更セオがまた思い出してほしいと願っても、この世に、恨みを持ちながらも順応しているディエゴに、過去のことなど不要なのか。

 それでもわたしは離れたくない、とセオは強く思う。そう、ディエゴがどう思っていようと、セオにとっては経った一人のディエゴなのだ。思い出してくれなくたっていい、セオを他の人間と同じく大量生産された人間の内の1人と思っていてもいい。せめてディエゴが幸せに生きていられる手伝いができるなら。
 それでも、もう一度自分の前に現れて欲しい。もう一度、そうすれば、彼の非情な態度にも嘆くことはしない。

 嵐の中を走る。だんだんと雨風に慣れてきたのか、一時深く深く沈んでいたセオの心はちょっとだけ浮上してきた。ディエゴがどう思っていようとまた会いたいのだから仕方ない、ずっとずっと追い続けよう。
 セオの気持ちが前向きになる、それを読み取ったかのように雨が弱まった。風も止み、いつの間にか分厚い雲の間から日が差し始めていた。
 ゴールは近い、このまま突っ走ろう。






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