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Noble Mind pierces through the world -DEA- ... 13


 部屋にクローゼットは一箇所しか無かった。セオはそっと戸を引く。ダンボールや脱ぎ捨てられたのを詰めたような洋服でごちゃごちゃしている。それを更に横に寄せてスペースを作り、そこには、1人の女の子。ブルネッティと同じ黒い髪の女の子だ、イレーネ・ブルネッティに間違いないだろう。彼女はぼさぼさになった髪を床に散らばらせ、縄でぐるぐる巻きにされて横たわっている。胴と腕をまとめて縛られ、手首と足首もそれぞれ揃えてまとめられている。口には布ガムテープ、何度も貼り剥がしがされたらしく、肌が赤くなっているのが見える。

「イレーネ・ブルネッティね?わたしはセオ・ジョースター。カレルさんに言われてあなたを助けに来たよ。」

 そっと、刺激しないように話しかける。イレーネは泣きすぎたのか充血した目を丸くさせて涙を浮かべた。セオはごめんねと断ってガムテープに手を掛ける。できるだけ優しくそっと剥がすが、やはり痛いらしく、安心とは別の涙がイレーネの頬を伝った。

「っあ・・・うう・・・う・・・。」
「大丈夫、一緒にお父さんのところに行こう。」

 イレーネはこわい思いを沢山した所為か、がくがくと震えるばかりで言葉を口に出来ない。セオは堪らなくなり、彼女の縄を全て切り落とすと、小さな身体をぎゅうと抱きしめた。近くに空になった皿が積まれているので食事はとらせてもらっていたのが分かるが、緊張や恐怖やストレスから体調は崩れたのだろう、目の下のクマや頬が少しこけているなど、不健康な見た目が痛々しい。

「ジョルノ。」
「イレーネでしたか?」
「間違いないようです。」

 いつの間にか部屋の中はパッショーネのファミリーで溢れていた。彼らはカルドーネ達を家の外に運び出している。イレーネさえ助けられたならセオにはもうカルドーネに用無しなので困らないが。

「彼女はわたしがブルネッティのところへ連れていきますが、いいですか?」
「ええ、もちろん。こちらはカルドーネさえ捕まえられたなら後はどうしてくれても平気です。」
「わたしももうカルドーネには用事はありませんから、どんな拷問をしてくれてもいいですよ。」
「・・・あなた、わりと粗暴な性格してますね。」
「よく言われます。」

 イレーネはセオに姫抱きにされ、大人しくしている。自分が助かったのだと分かったらしく、すこしぐずってはいるが泣き止みはした。父親がエリートな分立派に育てられているのがよく分かる。

「とりあえず、あなたを無事にローマまで送り届けなければいけません。セスナ機を呼んであります、一緒に行きましょう。」
「え、良いんですか。」
「もちろん。・・・ミスタ、2号機にはセオとイレーネとぼくが乗る、手配は頼む。」
「はいはい。」






 パッショーネ所有のセスナ機。セオとイレーネ、ジョルノ、ミスタそして運転手はNO2と書かれた機体に搭乗した。1の方にはカルドーネ達が乗っていて、アジトに直行するとのこと。
 イレーネはいくらか落ち着いているように見えるが、まだ「はい」と「いいえ」を表すために、頷きと首振りしかできていない。父親に会うまでずっとこうなのだろう、まだ安心できる状態ではないと思っているのかもしれない。無理に楽にさせるのも良くないので、セオは座ったイレーネに毛布をかけて、寝ていていいよとだけ言った。
 セスナ機が離陸して20分ほど、隣からすやすやと寝息が聞こえてきた。イレーネは壁に頭を寄せて眠っていた。

「・・・メンタルケアとか、大丈夫か?」

 前の列に座っているミスタが顔を覗かせて言った。

「ブルネッティさんに会わせたら検診を受けてもらうことにします、心配しなくて平気ですよ。」
「医療のプロが揃ってるんだもんな。」

 総合病院が併設されているから、心の問題はそっちでどうにかしてもらう。10歳の女の子には心的に辛い出来事だったに違いない。

「・・・ブルネッティさんの方も、イレーネが戻ってきて元気を取り戻してくれるといいんですけれど・・・。」

 彼への罪滅ぼしのつもりでイレーネを助けにきたのだ、この行動が報われてほしいとセオは思う。






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