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Noble Mind pierces through the world -DEA- ... 08


 場所を移して、病院から少し離れたテヴェレ川沿いのカフェー、である。セオはミスタの奢りでサンドイッチとカフェオレを頂いた。

「・・・それで、その小さいスタンドの妖精がわたしに着いて、ブルネッティさんのところにまで来ていたんですね。どうしてわたしがSPW財団と手を組んでいると分かったんですか?」
「ジーノっつー名前だよ、聖堂で電話に出た時に言っていた。ジーノ・ボゼーだろ?」
「名前だけで判断したんですか。」
「もしかしてと思っただけさ。それであんたを尾行したらあの総合病院に着いた、それで確信したんだ。アイツ、ブルネッティに麻薬密輸の容疑がかかってるから身柄を引き渡せって言ったのを無視しやがった。オレたちの組織とSPW財団は手を組んで上手くやってるはずなんだが、あの女はオレたちに冷たい。」
「ブルネッティさん、麻薬をやっていたそうですね。本人が言っていました。」
「そうなんだよ、その麻薬の出処を調べてブッ潰すのがオレの任務さ。」

 ミスタは得意げにふん反り返った。
 彼がセオを外国から来たと知ったのは、彼のスタンド<セックス・ピストルズ>がセオに着いてブルネッティとの面会場面に立ち会ったからだそうだ。そういえばジーノが観光をしていくのかとセオに問うていた、それを聞いて外国から来たのだと踏んだそうだ。そして、ジーノの息が深くまでかかっていないこのセオならば、ブルネッティのために一肌脱ごうとしているセオならば協力してくれるかと思ったのだという。

「わたしはスタンドが見えないので、全く気付きませんでした。」
「実はあの大聖堂で、オレのピストルズたちは大暴れしてたんだぜ。まだ昼には早かったくせに、食事を取らせろって騒いでいた。なのにあんたは何も言わないから見えないと思っていた。しかしなんださっきの技は?」
「あれは"波紋"ですよ。」
「ハモン?」

 知らない人に1から説明するのは面倒だったので、そういう力です、と言うだけで片付けた。ミスタはその説明に当たり前だが不満そうだった。自分で調べてくださいと言っておいた。
 そんなミスタはピザを食べている、のだが、その食べ方が妙である。自分はもちろん食べているのだが、ピザの一切れを細かく6等分にし、それを見えない誰かに食べさせているのだ。それがピストルズの6人なのだというのは、彼からスタンドの説明を受けたのでわかる。しかし不思議な光景だ。

「スタンド・・・わたしの血族はスタンド使いだらけなんですけれど、わたしには一向に現れません。両親もスタンド使いだったらしいのに。」
「そのうちきっかけがあれば目覚めるんじゃねえのか?」
「だと良いんですけれど。」

 未だスタンド能力に目覚めないのはちょっとした悩みだ。両親は20歳(120歳とも言うか)を過ぎてから覚醒したそうなので、まだ猶予はあるにしても。杜王町で高校生だったころに覚醒したという人が多くいたので、それが引っかかっていた。

「まあいいです。それで、ブルネッティさんについて何が知りたいんですか?」
「何が知りたいもなにも、麻薬の出処だよ。」
「うーん、後で彼に訊いてきますけれど、見返りに彼の娘さんを攫った人の割り出しに協力してくれます?」
「イレーネ・ブルネッティだったか?いいぜ、オレんとこの奴らに調べさせれば犯人なんて一発で出てくる。」
「ミスタさんの所属はどういうところで?」
「・・・聞いて驚くなよ?」

 また得意げに鼻を鳴らすミスタ。セオはちょっとやそっとのことで驚くたちではないので期待はしていない。

「パッショーネだ、しかもナンバー3をやっている。」
「へえ、偉い方なんですね。」
「・・・驚かねえか、まあ外国人だもんな。国内の奴らだったら知ってることだしな・・・。」

 拗ねたようにそっぽを向くミスタ。面倒だなぁとセオは思ってしまった。
 パッショーネ、事前知識で知っている。イタリアを広く牛耳るギャング団だ。そんな中でナンバー3となると、かなり力があるのだろう。ボスにも近く、色んな人を動かせる立場にありそうだ。そんな彼なら総力を挙げてイレーネ・ブルネッティを攫った人物を割り出してくれるだろう。

「イタリア国民のことなら何でも調べられるぜ、1日もあればなんとかなる。」
「SPWの方でも調べてくれるようですけど、見つからないかもしれない可能性もありますし、助けてくださると嬉しいです。」
「あーボゼーよりは早く見つけ出してえな。」
「よろしくお願いします。」

 セオはイレーネ・ブルネッティの行方と誘拐犯が知りたい、ミスタはカレル・ブルネッティの麻薬の入手先が知りたい。良い取引になる。世界をまたにかけた財団とイタリア全土を縄張りとするギャング、力強い限りだ。あの場で簡単にブルネッティに引き受けると言ってしまった約束だが、しっかり果たすことができる。

「わたしはブルネッティさんに麻薬を売っていた相手が怪しいと思います。数いる国会議員、子供がいる議員も少なくないのに選ばれたのはブルネッティさんです、そこに後ろ暗い麻薬という存在がいるなら、怪しむべきでないかと。」
「なるほどね、無いとは言い切れないな。そうしたらオレたちが追ってるのは同じ相手になるんじゃあないか?」
「でしたらその時はまたミスタさんに助けていただけます。」

 さて、そうときまったら早いうちにブルネッティに麻薬の取引先を聴いておかなければ。麻薬を使用していたことは検査で分かっているらしいし、本人からの自白もある、買っていた先についても訊けば答えてくれるだろう。それかすでにジーノが訊いているかもしれない。答えなくてもイレーネのためだと言えば、直ぐに口を開いてくれそうである。
 ミスタ達パッショーネの存在のおかげで、わりと早く事件を解決できそうだ。セオは彼と電話番号の交換をして、また病院に戻った。
 既に日は遠く、白く染まった山々のきわを橙色に染めていた。






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