リベンは本当に分かりやすい。リベンを全く知らないやつや興味ないやつは分からないらしいが、ある程度気が知れたらアイツが分かりやすい奴だと理解する。
少しだけ早足気味のリベンは、少しだけ口角をつり上げて目を少しだけ細めていた。少しだけ、ほんの少しだけなのになんだかリベンが幸せそうに見えた。
「……そういや、今日はバレンタインだったね。優ちゃんにチョコレート貰ったの?」
ぴくりと反応したリベンが立ち止まりこちらに振り向く。つられて立ち止まれば、リベンの手には安物の紙袋が握られていたことに気がついた。
「…………ああ。貰った」
照れ臭そうに、視線をずらして紙袋へ視線を移すリベン。
安物の紙袋といえど、優ちゃんは一般人。一人一人に紙袋やラッピングの包装を買うはずがなくて、きっと優ちゃんにとってもリベンが特別なんだって察することができたんだ。
「は、早いけど、俺も、花を渡してみたんだ。……迷惑だったかな……?」
「……女の子だし、嫌ではないと思うよ。何の花にしたの?」
「……バラ。青い、バラ……珍しいし、綺麗だったから……」
おずおずと訊ねてきたリベン。イタリアでバレンタインは愛を確かめあう日。ロマンチックならロマンチックなほど、いいバレンタインだと賞賛される文化だ。花なんてスタンダード中のスタンダードだろう。面白みもくそもない。
だけど、リベンがあげるって聞いたら重みが違うんだよなぁ。……だいたい、赤をあげようとしないだけでリベンらしい。
如月と同じ色ではなく、真逆の……俺達の瞳の色をした花を渡すなんて、やっぱりお前は独占欲があるんだね。
無自覚なくせをして、相手を自分の領域に取り入れる。守る振りをして逃がさないようにする。
家族なんて建前で、お前は誰かと共存したいだけだ。
「いいんじゃないかな。日本人は珍しいもの好きだし」
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