番外小ネタ | ナノ






『私、如月くんが好きで……でも、叶うとは思わないよ?』
『如月くんは、私のこと分かってくれてて……』
『せめて、如月くんの力になれば幸せかな』


 違う。如月は、お前を道具扱いしているんだぞ。
 アイツはマインドコントロールでお前を惹き付けてるだけだ。
 俺は知ってるのに。お前が優しいこと、いい女だって知ってるのに。


『お前、優に惚れてたのか』
『まぁ、別にいいんじゃね?』
『そう仕向けてやろうか? ああ、でも……仕事で使うときあるから、そんとき返せよ』


 なんで、あんな野郎に。

 裏社会の人間が、一般人にいれこめば、一般人も普通の生活ができなくなる。だから、諦めようとした。
 だけど、あんな野郎に。いざとなれば切り捨てられるから関わるようなあの野郎に尽くす優を見ていたら、諦めた理由が可愛く見えてくる。
 なら、いっそ。
 そして、優の目を覚まさないと。


▽△


「まさか夜美ちゃんやクロウくんやリベンくんの勤めてる会社のお手伝いさんになるとは思わなかったなぁ……神社は大丈夫?」
「ああ。あっちには派遣送ってる。だけど、ここの仕事はお前にしか出来ないからな」
「何か照れ臭いなぁ。できるだけ頑張るね」


 無邪気な笑みを浮かべる優に、思わず頬を緩めてしまう。
 これで、如月の手が触れない場所まで連れてこれた。優の携帯も偽造した。如月が電話しようが、優の電話が鳴り響くことはないだろう。
 優はクオーレの人間しか立ちは入れない場所の掃除や料理、身の回りの世話中心の仕事を与えた。あとは、優が使うだろうネット環境を使えなくすれば、如月と一切関われなくなる。
 優があんな悪魔と関わらなくなる。そう考えただけでにやけてしまう。


「……り、リベンくん。大丈夫? 凄い怖い顔で笑ってるけど」
「……ああ、わり」
「いや、大丈夫だよ。それよりホントに大丈夫? お姉さんに相談してもいいんだよ」
「……あんま年上面すんな」
「あ、ごめん」
「あー…ちが……。お前もなんかあれば俺にいえ。なんとかする」
「ホント? ありがとう! リベンくんは頼りになるなぁ」


 俺がお前に頼るより、お前が俺を頼ってほしい。
 俺がいなくてはいけない程に、頼ってもいいのに。


「……ああ。そういや」
「ん?」
「お前、泊まり込みだっただろ。部屋で足りないものとかあったか? ……シャンプーとか」
「えっ。そうそう! シャンプーなかったの。凄いね、リベンくんはエスパー?」
「……いや、きれてた部屋に入れた。悪かったな」
「あはは。大丈夫だよー」


 ……全部、知ってる。
 如月なんかより、全部調べてやる。
 お前が何時どこで何をしているのか。全部だ。


「あと、ネットとかあれば嬉しいなって」
「ダメだ。ハッキングされたら組織はおしまいなんだぞ」
「……ですよね」
「……本、好きだったよな? 買ってやるから、我慢しろ」
「えっ!?」
「あと、音楽プレイヤー」
「リベンくん太っ腹過ぎない!?」
「これから頑張ってもらわなきゃならないからな。前祝いだ」
「わ、ぁああああ……!! ありがとう……!! じゃあ、何時かリベンくんのお祝いの時、プレゼントあげるね!」


 満面の笑みを浮かべて礼を言う優。
 お前をくれるのが一番のプレゼント……までは言えないな。
 いずれ、俺の女にするが。


「……ああ。そうか。そうだよな……じゃあ、行動しなきゃな」
「……リベンくん?」
「優」


 普段呼ばない名前を口にすれば、優は体をこわばらせて何事かと俺を見上げる。
 その顔をもう如月は見れない。優から如月の臭いがすることもない。如月のせいで泣くこともない。
 優は、もう安全だ。


「……俺さ、お前のこと好きだんだ」


 あとは優が如月を忘れるだけ。如月を思い出すことがないくらいまで俺に堕ちるだけ。


「……この思いは、誰にも負けない自信がある。だから、覚悟してろ」


 優。はやく俺の所に来い。



▽おまけ会話文△


1
「リベンくん。どうしたの? 罰ゲーム?」
「……罰ゲームで告るような軽い奴に見えたか?」
「あ、え、ご、ごめん! 私なんかを好きになる人いないんじゃないかって! そうだよね。え、えー」
「そういうことだ。今は理解しておけばいいから」
「え、と……あ、ありがとう……」
「……それは付き合ってもいいって意味か?」
「……あの、ごめんなさい。私」
「あー、いい。分かってる。だが諦めないからな」
「…………」


2
「クロウくん。リベンくんがおかしいんだけど……」
「え? どこが?」
「別れる時とか、会うときに頬にちゅーしてきて……」
「ああ、こっちの挨拶みたいなもんだから気にしなくていいよ」
「……ううん……」
「(リベン、絶対しなかったのにな。珍しい……)」


3
「クロウくん。またリベンくんが変で……」
「今度はどうしたの?」
「ネックレスとか、指輪とか、時計に香水……あと箸とか櫛までくれたの。リベンくんの財布事情大丈夫なのかな」
「…………ま、つけてあげたら? そのほうがリベンも喜ぶだろうし。あの守銭奴がわざわざ君へ送ったんだから気にすることないよ」
「そ、そうなのかな……」

4
「クロウくん。私、デブになって全部服着れなくなったの。そしたらリベンくん、仕方なしに服買ってくれて……申し訳ないから私のお金渡してくれないかな?」
「……いや、大丈夫じゃないかな?」


5
「クロウく」
「優」
「わっ! り、リベンくんかぁ」
「どうした……? 何かあったか?」
「あ、いや、クロウくんを」
「兄貴は今、忙しいから。で、どうした?」
「う、ううん……」
「…………優? 俺に言えないことなのか?」
「そ、そ、そんなこと、ないよ……あの、さ。きさら」
「は?」
「……っ。あ、あはは。あの、夜美ちゃんに会いたいなって」
「なんで?」
「お友達だし……ね?」
「ようは喋り相手が欲しいのか? それとも遊びたいのか?」
「どっちもかな。いやぁ、最近ガールズと」
「じゃあデートするか」
「……ん? や、あの、リベンくん? だから女のコ」
「別にいいだろ。だいたい、夜美はトラブルメーカーだし、お前一緒にいたら死ぬぞ」
「…………あ、飛鳥ち」
「弱い。俺ならお前を守れるからな。な? 優。俺だけでいいだろ?」
「……リベンくんが、大丈夫なら……でも、何時でもいいからね」
「おう」


5
「お家、帰りたいよ……」
「だから、もし敵に狙われたらどうするんだ? 大丈夫。ここなら優は安全だ……ほら、優。口開けろ」
「ご飯くらい一人で食べれるよ……」
「毒はいってたらダメだろ? 俺のは大丈夫だから」
「リベンくん。おかしいよ……どうしたの……?」
「……全部優の為だ」
「私の為なら、お家に帰して……」
「外はあぶねぇっていってんだろ」
「大げさだよ……私、もうリベンくんの部屋から出たの何時か覚えてない。リベンくん。わたし」
「あ、やべ。仕事の時間だ」
「えっ。や……やだ! 待って! せめて部屋からだして!!」
「ごめんな。泣かせたくないんだけど……今度は三日程度だから」
「死んじゃう。死んじゃうからだして!! リベンくん! 助けて!!」
「早く終わらせる。大丈夫だ。愛してるよ、優」
「あ、あああああ………いやぁあああああああああ!!」


6
「優」
「リベンくん。私、いい子でお留守番できたよ」
「うん。偉いな」
「ふふふ。リベンくんが守ってくれるからお留守番できたんだよ? ありがとう」
「当たり前だろ……あ、着てくれたのか。似合ってる」
「白のドレスなんてウェディングドレスみたいで照れ臭いな」
「そのつもりで渡した」
「……え?」
「結婚、するぞ」
「……してるものかと思ってた」
「あー。してるようなもんだけどな」
「ふふ。嬉しい……私もリベンくんと結婚したいです」
「…………ん。幸せにする」
















「ねぇ、リベンくん。本当にリベンくん以外の人間って存在するの?」
「……優を殺す様な怖い怪物だから、外に出たらダメだぞ」
「ふーん。リベンくんが言うならわかったよ」


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