クロウさんが好きだったのは、間違いないと思う。
だけど、私は真也お兄ちゃんみたいに、ソコに居ないのに思い続けるほど孤独に強くない。
ある日、クロウさんの格好をしたリベンさんが、クロウさんの真似をぎこちなくしていた所を見て、クロウさんは死んだんだって、勘なんだけど思ってしまった。
リベンさんの前では、笑ったけど私はその日泣いた。クロウさんが何時死んでもおかしくない仕事をしているのは、夜美ちゃんと同職だということから知っていた。だけど、終わりは呆気無さすぎたんだ。あの笑顔も、優しさもこの世の何処にもない。私の初恋は、完全に消え失せてしまったんだ。
だけど、リベンさんは時々私の目の前に現れては、クロウさんの真似をして私に良くしてくれた。もしかしたら、クロウさんがリベンさんに頼んだのかもしれない。リベンさんはクロウさんが大好きだから、きっと嫌嫌してるんだろう。
だから、本当は気づいてるよって言おうとしたんだ。だけど、リベンさんの一生懸命に演じる姿は、クロウさんへの弔いに近いものじゃないのかって思い浮かんで、私は言葉を飲み込んでしまった。
それから、リベンさんと私はどんどん年をとった。
どんどんクロウさんの真似がうまくなるリベンさんに、そんなクロウさんを好きだと演じる私。中身がスッカスカだけど、それでも止められなかった。今、彼にそれを伝えて今までの演技が無駄だったなんて思って欲しくなかった。
いや、私は彼に惹かれていったんだ。リベンさんが好きになっていた。クロウさんって名前じゃなくて、リベンさんって呼びたかった。でも彼を傷付けるのは嫌だった。彼の努力を踏みにじりたくなかった。
でも、そんなのダメだって史織ちゃんが私を目を覚ましてくれた。それじゃ、筋が通ってないって。
そうだよね。リベンさんが好きなんだ。この気持ちには誠実でないといけない。例え、彼を深く傷つけてもとしても。
「リベンさん。私は、貴方が好きです」
その穴を埋めることを許されるならば、私は、ちゃんとリベン……チェイス・マーチンさんの隣で胸をはって歩きたいだけなんだ。
← | top | →