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唯side
アルバイトが終わり、ルンルン気分で帰り道を歩く。
手にはクリスマスに残ったケーキ(ホール)を持っていた。
「いやー今回余り物がもらえるとは!うれしいねぇ」
「・・・・唯、ちゃんと前を見なさい。 電柱にぶつかるよ」
ふいに隣から声がする。
横を向くと185cmくらいの黒髪、そして赤い目の男性が心配そうにこちらを見ていた。
この男性は私にしか今は視えない。
黒髪の男性・・・カインに向かって私はほほ笑む。
「わかってるって・・・・クリスマスは沙弥とか小虎に迷惑かけたし。
おすそ分けしないとねー」
「迷惑かけたと自覚している事はいい事だろうけど、それ振り回すと
ケーキが崩れるよ?」
「あ・・・・まぁ大丈夫大丈夫。食えれば一緒一緒」
あははと笑い、中をちらりと見る。
少しだけケーキの形が崩れていた。
さっと中を閉じ、また歩き出す。
大丈夫これはまだいける!!
「歩実にも言いなさい。一番彼女が苦労しただろうからね」
「歩美・・・・?あぁ、あのコスプレ少女!!」
あの犬耳いったいどういった作りになっているんだろうか?
ぴくぴくと動くとかすごいね、今の機械。
関心しているとカインは「まぁ、普通の反応はそうだろうね」と笑った。
「確かにあの子には苦労させたなぁ・・・・主にマンション修復に。
いくらかかったんだろう? 親父に言えばなんとかしてくれるかな?
怒られるけど・・・・」
むしろ親父のヘソクリから修理代だそうかな?
バレていないと思っているからなぁ・・あのアホ親父。
くっくっくと笑っているとカインが首をかしげる。
「お金はかかってないと思うけど・・・うーん気力が大変だったと思う」
「自分で修理したの?・・・何者あいつ。
建設の資格持ってるとか?
・・・今度部屋の壁塗り頼もうかな」
「ふふっ・・・・唯はまだ早いからね。死んだらきっとわかるよ」
「え?私に一辺死ねと?」
何気ひどくない?と思っているとカインがこう言った。
「いや、死ねとは言ってないよ。ただ歩実を知覚するのはまだ早いってこと。
唯は神様とかそう言った類信じてないだろう?」
「神様がいたら捕まえて永遠に願いこときいてもらうよ。いたらね」
そう興味なさそうに呟くとカインは「それは神様も大変だね」と小さく笑った。
マンションへと到着しルンルン気分で玄関の扉をあける。
「ただいまぁ、ケーキ買ってきたよーって・・・・何だこれ?」
玄関は靴やへし折れた傘で散乱としており、そして血がべっとりと付着していた。
おい、誰がやったこれ?
え?何、クリスマスに私がクーデター起こしたからって嫌がらせ?
一気にテンションが下がり、とりあえず玄関の棚にケーキの箱を置いて
中へと入る。
「真也―?小虎いる?」
おそるおそる名前を呼んでみるが誰もいなく。
ぐちゃぐちゃに散乱したリビングが私をお出迎えした。
「・・・殺人事件でもあったのかな?」
「殺人現場だったら今頃警察であふれかえってるってーの。
血が乾いているし、数時間くらいは経過してるんじゃないかな?」
手でそっと壁に付着した血を触る。
サラサラとしており完全に乾ききっていた。
リビングへと入るとテレビにナイフが2,3本突き刺さっていた。
地面には翼が引っ越し祝いにとマンションに寄贈したグッファーちゃん(ぱちもん)が
横たわっている。
ナイフ20本くらいささってね?
サボテン状態になっている。
ふいに、上からごとごとと物音がした。
小さい声だが男女の悲鳴みたいな音が聞こえる。
「誰か・・・・喧嘩してるとか?」
「・・・喧嘩にしてはすごいね。 どちらかと言えば普通の人間がやる仕業じゃないよ」
「普通の人間じゃない・・・・ねぇ。あ、ちなみに私じゃないから」
「知ってる・・・・とりあえず上に行こうか。
何かわかるかもしれないからね、念のため何か武器でも持って行った方がいいのかも」
「鉄パイプ・包丁・スタンガンどれがいい?「どうしてそう危ないものばっかり!!」
市ノ瀬が原因だったら殺そうかと・・・」
「女の子なんだから・・・」
頭に手をのせ、深いため息をつかれた。
女の子だよと言い返したら可哀そうな目をされたんだが。
これは殺していいフラグかな?かな?
ゆっくりと階段をのぼり、廊下をみた。
真っ黒い何かが動いている。
そしてぶつぶつと何かいっていた。
「・・・?」
「ねぇちゃん!!やめて!!俺にメイド服似合わないから!!
田村さんにやって!!」
「そこで私をチョイスするな!!」
「だいじょうぶ。ちゃんと2人分あるから」
「スク水やめてぇええええええええ!!!」
・・・なんかすごく面白そうな「唯カメラ準備しない」
後ろを振り向くとジト目でカインが睨んでいた。
「目が$のマークになってるよ」
「あら、やだぁ・・・私ったらおちゃめ」
と可愛くいったら唖然としていた。
失礼な・・・
「とにかく、2人を助けないと危ないね」
「このまま見て、最後に写メ撮るという選択肢は・・・・あぁ、ないんですか。
ダメなんですか・・・・
・・・ちっ」
むくりと起き上がり、廊下の奥にいる3人へと近づく。
沙弥に向かって尋ねてみた。
「沙弥何やってんの?」
「鷹野さっんっあぶない!!」
そう叫ぶと同時に黒い塊がこっちをみた。
金色の目で私をみている。
私の姿をみるとバっと一歩下がり、もうスピードで205号室へと入っていく。
ガタガタと何かが壊れる音、そして誰かの悲鳴がまたあがった。
「さすがの姉ちゃんも鷹野さんが怖いんだ「あ“ぁ?なんだって真也くぅぅうん?
何が怖いって?」・・・・ナンデモナイヨ」
そう?と言い返すと真也が沙弥に抱き着いた。
ひどくね?
「で? 何があったのか説明してほしいんだけど」
「私にもさっぱり・・・・部屋でくつろいでいたら夜美さんが入ってきて」
「あぁ、なるほどそれで見る限り追剥されかけたと・・・」
「俺・・・・お嫁にいけない!!」
「え・・・大丈夫か真也。私しか見てないし!「沙弥ちゃんのお嫁さんになる!」
え?婿じゃなくて?・・・えっと・・・よろしくおねがいします」
「バカやってんじゃねぇぞ。 リア充ども・・・・」
「唯、落ち着きなさい。 ここで暴力事件起こしたって何も解決しないよ。
2人も早く新しい衣類に着替えた方がいい。
見張ってるから」
カインがそう言って困ったように笑う。
それで気づいた真也が見ちゃダメっと叫んで沙弥を部屋へと連れて行く。
「私、女なんだけど。 沙弥の上半身見たってなんともないんですけど。
真也は私を男だとでも思っているのか?・・・失礼な」
「きっと私のせいだと思うよ。 今の状態で他の男性に見られても困るだろうし」
いや、むしろ沙弥は見られても平気なやつだと思うんだけど。
真也が女々しいだけで・・・あれ本当性別逆転した方がいいんじゃないかなと思う。
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