喧騒が日常
山月小虎はすぐ近くで聞こえた爆発音と破壊音、罵声に「またか……」と遠い目をして庭の掃除を続けた。――最初の時は小虎だって驚いた。でも、これが毎日なら慣れるに決まっている。
「平城か鷹野と市ノ瀬か……平城のお姉さんは出張だしまだマシか」
小虎は自分が住むマンション――「櫂木荘」を見る。マンションというより、些か下宿のような懐かしい雰囲気がある。外装も内装も普通に現代的で綺麗なマンションだ。彼はここで、住み込み手伝いをしている。主に掃除や料理を担当しているが――……住む人間がネジ一本飛ばしているような人ばかりだった。
「……人間でもない妖怪みたいな人もいるしなー……」
管理している少女は、犬耳が生えているし、小虎の隣の部屋は銀狐と猫又の妖怪二人組が住んでいる。さらには、ここでしか見えない紳士な幽霊も居る。良い人たち(?)だが、なんだか大人のような感じがまったくしない……というのが小虎の正直な気持ちだった。
「妖怪より濃い人間もいるし……」
それは小虎の周囲――無表情でボケをかましてくる美少女や高笑いの男の娘、ビビりワンコなんて目ではなく――キャラが濃い。
お節介でタラシの少女に、その少女に惚れている怪力少年、毒舌魔王。
ギャンブル好きの少女、その少女を一途過ぎるほど想う名前不明の少女、二人に迷惑をかけられる少年
――爆発音も主にこの面子のせいだった。
このマンションは、いつも喧騒が堪えない。
そしてまた――爆発音が続き、小虎は苦笑を漏らす。
「俺も慣れてきたなぁ…」
……ある意味、日常になりつつある爆発音はみんな元気という証というわけで、お節介不良の彼は今日も呆れながら、苦笑を浮かべながら、マンションの誰かの世話を焼く。
住み込みとして、仕事だから?
否。
「――正直、飽きないよなあ、このマンション……」
彼は晴れやかに笑いながら、この喧噪溢れる日常を楽しいと思っているのだった。
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