オズ夜美こらぼ番外編 | ナノ


病状注意報

 最悪の出来事が起こった。


「あ、夜美前なんだ。まぁこれからいろいろとよろしくね」


 くすくすと後ろで気色の悪い声を漏らしている恋人(仮)。
 ことの起こりは先生が席替えをするといいだしてからだ。今まで定位置だった廊下側の一番後ろの席からしぶしぶ離れることになり、後ろから二番目、そして窓側の席が私のテリトリーになった。だけど、その背後から私のテリトリーを侵害しかねんやつが、にやにやと私を見ている。まぁ、見ないと黒板みれないんだけどさ!!


「……いらないこと、しないでよね」
「夜美は反応しなきゃいいだけでしょ」
「おい」
「はいはい。授業始まるよ。前向きなよ」


 正論で返されるのはなんか尺だが、授業に出るからにはしっかり受けなければならない。しぶしぶ前を向いて、ボロボロになった(あんまり使ってはいないんだけど、持って行ったり帰ったりするとすれてすぐボロボロになるんだよ)教科書を開いて、鉛筆を取り出して先生の授業に神経を集中させた。
 だけど、ふいに私の机の脇に白い紙が転がる。丁寧に四つ折りにされていて、小さな手紙みたいなものだった。私にこんなことするのはオズくらいだろうと、呆れながら手紙を開くと、整った文字で「昨日は気持ちよかった?」なんてセクハラ発言。思わず机に頭を叩きつけた。


「ひっ、平城大丈夫か……頭……」
「だ、だいじょうぶれす……」


 後ろから笑いが収まらない、だけど必死にこらえているオズが目に浮かぶ。ああ、こいつ本当最低だ。
 なら仕返しだ。どういった言葉で返そうか。
 ……まずは素直に返してやろう。文面なら、薄めならできる。
 えーと、きもちよかった。どこが? うーん。ちゅーしてる時が一番頭ぼーってした。んで、えーと……まぁ、オズの体温が心地よかった。なんか恥ずかしくなってきたこれで返そう。
 その返した文を後ろに回して三秒後、オズが咳き込んだ。


「だ、大丈夫かヴェンチェンツォ……風邪か……?」
「……いえ、大丈夫です」


 ぶはははは!! ざまーみろこの変態女たらしが!!
 オズがこちらを忌々しげに睨みつけている顔が目に浮かぶ。にやにやとご機嫌になっていたら、また手紙が回ってきた。おそるおそる開けると「君って本当馬鹿だよね。頭おかしいんじゃないの?」なんて書かれていた。



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